【8月30日 AFP】パキスタン司法当局は29日、国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)を率いたウサマ・ビンラディン(Osama Bin Laden)容疑者の潜伏先特定のため米中央情報局(CIA)に協力したパキスタン人医師に対する有罪判決を無効とし、再審理を命じた。

 シャキル・アフリディ(Shakeel Afridi)受刑者は、ビンラディン容疑者が潜伏していた町アボタバード(Abbottabad)で、予防接種と称したCIAのDNA検体採取に関わり、同容疑者の潜伏先特定に協力した。容疑者の家族の検体を採取することはできなかったが、2011年5月に同町で米軍がビンラディン容疑者を殺害すると、アフリディ受刑者は逮捕された。

 パキスタンの裁判所は2012年、部族地域の司法制度に基づき、武装組織とつながりを持っていたとして、反逆罪により禁錮33年と罰金約35万円の有罪判決をアフリディ受刑者に言い渡した。ただ、CIAとの協力関係については、裁判所の管轄外という理由で罪を問われなかった。

 パキスタン側は、ビンラディン容疑者を殺害した米国の作戦を国家主権の侵害だと断じたことから、両国間の関係はかつてないレベルまで冷え込んでいた。米国会議員らはアフリディ受刑者に対する判決は同国に対する報復行為だとの怒りの声を上げ、パキスタンに対する経済援助の凍結も示唆した。当時、国務長官だったヒラリー・クリントン(Hillary Clinton)氏も、「不当で無根拠」だと非難していた。

 アフリディ受刑者の弁護士は29日AFPに対し、北西部の都市ペシャワル(Peshawar)の行政長官がこの有罪判決を無効とし、再審理を命じたことを明らかにした。この動きは、米国から歓迎されるものとみられる。

 ビンラディン容疑者の殺害以降不和が続いていたパキスタンと米国の関係は、これまでに大幅に改善。新たに首相に就任したナワズ・シャリフ(Nawaz Sharif)首相は米国との連携を希望する姿勢を見せており、長く対立関係にあるインドとの対話路線を打ち出している点も欧米諸国から評価されている。(c)AFP/S.H. Khan