【8月24日 AFP】エボラ出血熱を発症した霊長類を、実験的治療により回復させることに成功したという研究論文が21日、米医学誌「サイエンス・トランスレーショナル・メディシン(Science Translational Medicine)」(電子版)で発表された。これにより、エボラウイルス感染患者の治療への道が開けるかもしれないという。

 世界保健機関(World Health OrganizationWHO)によると、エボラ出血熱に対する治療法はまだ確立されておらず、ワクチンも存在しない。ウイルス型にもよるが、発症患者の25~90%が死亡するという。

 研究者らによると、「MB-003」と呼ばれるこの治療法は、抗体のカクテル(多剤併用)療法で、エボラウイルスに接触してから1時間以内の霊長類に施したところ、発症を100%防ぐことに成功した。成功率は時間の経過と共に下がり、接触後48時間で治療した場合、実験対象の3分の2で発症の予防に成功、104~120時間後に治療した際の回復率は43%だった。

 1976年にコンゴ民主共和国(旧ザイール)で初めて発見されたエボラ出血熱は、世界で最も悪性度の高い疾患の一つで、生物兵器に利用される恐れがあるとの懸念が持たれている。研究者らによると、エボラウイルスは増殖速度が速く、感染と闘う免疫系の能力が追いつかなくなるという。

 今回の論文の著者らによると、MB-003は、エボラウイルスを不活性化すると共に、免疫系を始動して感染した細胞を破壊させることができる。同治療を施した霊長類に副作用はみられていない。

 MB-003は、米国の政府と民間企業の10年に及ぶ共同研究の成果だ。同研究は、国防高等研究計画局(Defense Advanced Research Projects AgencyDARPA)、国立衛生研究所(National Institutes of HealthNIH)、国防脅威削減局(Defense Threat Reduction AgencyDTRA)などの米政府機関から資金供与を受けた。

 今回の研究に協力した米カリフォルニア(California)州サンディエゴ(San Diego)のバイオ医薬品会社「Mapp Biopharmaceutical」のラリー・ザイトリン(Larry Zeitlin)社長は「エボラウイルスを治療または予防するために認可されたワクチンや治療法がまだ存在しない中で、MB-003は開発を継続できる有望な候補だ」と述べている。

 MB-003は、米ケンタッキー(Kentucky)州オーウェンズボロ(Owensboro)にあるケンタッキー・バイオプロセシング(Kentucky BioProcessing)社の研究所で製造されている。(c)AFP