【8月19日 AFP】南米エクアドルのラファエル・コレア(Rafael Correa)大統領は前週、アマゾンの原生林での石油探査を中止する代わりに森林保全を目指していた国際信託基金が目標額に達しなかったとして、掘削に着手する方針を表明した。

 コレア大統領は国民に向けた15日の演説で、1989年に国連教育科学文化機関(ユネスコ、UNESCO)の生物圏保護区に指定されたヤスニ国立公園(Yasuni National Park)での油田掘削を認めるよう、議会に諮ると表明。「深い悲しみと、エクアドルの国民と歴史への絶対的な責任とともに、私は政権において最も厳しい決断を下さなければならない」と述べ、森林保護計画の撤回を明らかにした。

 問題となっているのはヤスニ国立公園内の3か所での油井掘削。複数の先住民が暮らすこの地域には、およそ9億2000万バレルの原油が埋蔵されているとみられている。しかしコレア大統領は2007年、推計4億トンの二酸化炭素が大気中に放出されるのを避けるためとして、油田開発を中止する代わりに国際社会から36億ドル(約3500億円)の森林保全基金を募る計画を発表。国連開発計画(UNDP)が管理する信託基金には、これまで民間企業やベルギー、チリ、フランス、イタリア、スペイン、インドネシアなどが資金を拠出していた。

 ところが、コレア大統領は今回、6年間で集まったのは1330万ドル(約13億円)のみで目標額のわずか0.37%にとどまったと説明。「世界はわれわれを失望させた。したがって、私は国益に基づいてヤスニの開発を認めるよう議会に求める」と述べた。

 2008年に制定されたエクアドルの新憲法は、環境保護地区の再生不能資源の開発を禁止しているが、「国益」に影響する場合は禁止を適用しないよう大統領が要求できることになっている。

 コレア大統領は、開発を行ったとしてもヤスニ国立公園の99%は手つかずのままだと主張している。(c)AFP