【8月13日 AFP】第2次世界大戦(World War II)中にナチス・ドイツが行った戦争犯罪に加担したとされ、存命する重要戦犯リストのトップに名が挙げられていたハンガリー人のラスロ・チャタリ(Laszlo Csatari)被告(98)が10日朝、入院先の病院で死亡した。被告は約1万2000人のユダヤ人をナチスの強制収容所に移送した罪で今年6月に起訴されていたが、結審を迎えることはなかった。

 チャタリ被告の弁護士が12日、AFPに語ったところによると、被告はしばらくの間、健康問題を抱えて治療を受けていたが、肺炎を発症して死亡したという。

 チャタリ被告の罪を裁判で問う努力は、被告が逮捕され自宅軟禁に置かれていたハンガリーと、犯罪の舞台となったとされるスロバキアの2か国で数年にわたり続けられてきたが、被告の死亡によって幕が引かれることとなった。

 米国を拠点とするユダヤ人権利擁護団体「サイモン・ウィーゼンタール・センター(Simon Wiesenthal Center)」によると、現在はコシツェ(Kosice)の名で知られるスロバキアの町カッシャ(Kassa)のユダヤ人ゲットー(隔離居住区)を管轄する警察幹部だったチャタリ被告は、1944年の強制収容所へのユダヤ人大量移送に関与したとされる。

 チャタリ被告をナチス戦犯リストのトップに挙げる同センターは、被告の協力によって1万6000人近くのユダヤ人がアウシュビッツ(Auschwitz)強制収容所に送られたと主張している。一方、ハンガリー検察は、被告が収容所に送ったユダヤ人の数を約1万2000人としている。

 1948年には旧チェコスロバキアの裁判所がチャタリ被告に対し、欠席裁判で死刑判決を言い渡したが、被告はカナダに逃れ、美術商として暮らしていた。しかし1990年代にカナダ市民権を剥奪され、ハンガリーに帰国。それより15年間は実名のまま不自由なく暮らしていたが、2011年になってウィーゼンタール・センターからの情報提供に基づきハンガリー検察が捜査を開始し、2012年7月に自宅軟禁下に置かれた。

 今年6月、被告を戦争犯罪者として起訴した検察は、チャタリ被告がカッシャ・ゲットーのユダヤ人招集・移送施設の指令役として、1944年のユダヤ人強制移送に「積極的に関与・協力していた」と主張していた。(c)AFP/Peter MURPHY