【8月9日 AFP】蚊に刺された時と似た効果によってマラリアを予防する新しいワクチンの研究報告が8日、米科学誌サイエンス(Science)に掲載された。このワクチンを接種した数十人に100%の予防効果がみられたことから、研究の初期段階で確実性の高い効果が示された。

 この新ワクチンは、米メリーランド(Maryland)州に本社を置く製薬会社サナリア(Sanaria)が製造した実験用ワクチン「PfSPZ」。蚊の唾液腺から採取した生きたマラリア原虫を使用している。

 スポロゾイト(種虫)として知られるこの原虫は、蚊の唾液腺の外では弱体化するので病気を発症させることはない。これをワクチンに注入し、約1か月の間隔を空けて数回、人の血管に注射して投与する。

 同じワクチンを使った2年前の臨床試験では、多くのワクチン接種と同様に皮下注射によって投与したが、被験者44人中で2人にしか効果がなかった。

 一方、最新の試験では、ワクチン接種1回ごとのスポロゾイト投与量を最大の13万5000匹とし、それを被験者6人に5回にわたって静脈注射したところ、全員にマラリア予防効果があったという。

 同様に最大の投薬量を4回にわたって注射した他のグループでも、9人中6人にマラリアへの完全な予防効果があった。

 世界保健機関(World Health OrganizationWHO)によると、マラリアのワクチンは市場に流通しておらず、2010年には世界で約2億2000万人がマラリアに感染し、うち66万人が死亡している。死亡者のほとんどはアフリカに住む子供だという。

 研究を主導したサナリアのスティーブン・ホフマン(Stephen Hoffman)氏は、放射線で弱体化させた熱帯性マラリアの原虫に感染した蚊に1000回以上刺された被験者の9割にマラリア予防効果があったとする1970年代の研究結果に着目していたという。

 ホフマン氏によれば、ワクチンの予防効果は接種後6~10か月。その他のマラリア原虫でも同じ予防効果があるのか、まだ確認が必要だ。タンザニア、ドイツ、米国での小規模な臨床試験を経て、4年後には市場で流通させたいとしている。(c)AFP/Kerry SHERIDAN