【8月7日 AFP】財政破綻した米デトロイト(Detroit)市が破産裁判所で年金給付の減免を認められた場合、すでにぎりぎりで生計を立てている多くの年金生活者たちは貧困に陥る──。

 元消防署長のジェリー・フランクリン・スミスさん(78)は、廃ビルと放火魔に溢れたこの街で、39年間にわたって炎と闘ってきた。

 スミスさんの不安は、もしも仮に破産裁判所がデトロイト市の年金支払額の削減を認めた場合、78歳にして新たな職を探さなければならないことだ。

   「これまでずっと、肉体を使った仕事しかしてこなかった。でももうそれは無理だ。不安になるよ」とスミスさんはAFPに語った。

 警察官と消防隊員には、連邦政府の社会保障制度による年金の受給資格がない。そのため、スミスさんにとっては市が運営する年金だけが唯一のたよりだ。

 消防隊員の年金の財政状況は他の市職員が加入している年金よりは良好だ。だがデトロイト市は、債務削減と将来的な支出カットのため、年金と退職者向け健康保険の全面的な削減を目指している。

■市財政赤字、公的年金と医療保険が大きな割合

 デトロイト市の緊急事態管理を担当するケビン・オア(Kevyn Orr)氏は2日、連邦破産法の適用を認めるかを判断する2回目の審理で、デトロイトの債務185億ドル(約1兆8000億円)のうち90億ドル(約8800億円)について、市職員1万人と退職者2万人の年金と退職者向け医療保険が占めているとの推計を提示した。

 労働組合や年金管理機関はオア氏の推計に異議を唱え、公的年金はミシガン(Michigan)州の憲法に守られているとして年金受給額の大幅カットを認めないよう訴えた。

   「リック・シュナイダー(Rick Snyder)州知事は、州憲法のあらゆる側面を守ることを誓った。われわれの年金を保護することができなければ、知事は宣誓に違反することになる」と、デトロイト警察官協会(Detroit Police Officers Association)のマーク・ディアズ(Mark Diaz)会長は述べた。

 この法廷闘争は数年ごしになる可能性もある。その間、年金を中心に生活をしようと計画を立てていた市職員や退職者の未来は、宙に浮いたままとなる。

 市当局の長年にわたる運営の失敗と、社会的、経済的に入り組んだ問題により引き起こされた財政危機の「つけ」を支払うよう求められていることについて、退職者の多 くは根本的に不公平であると考えているようだ。

  「年金は私が自分で稼いだんだ。与えられたものではない」と、水道局を退職したマイケル・マルホランドさん(65)は語る。

  「年金は繰り延べされた収入なんだ」とマルホランドさんは説明する。「私は多くの請負業者と仕事をした。彼らは年金を得られなかったが、その分、私よりも多く稼いでいた」

■モーターシティーから都市衰退の象徴へ

 かつて力強く産業を牽引した「モーターシティー」ことデトロイトは、今や衰退する都市のシンボルとなった。街は、廃墟となった高層ビル、工場、住宅で溢れている。

 デトロイトの人口は、1950年の180万人から半減し、現在では68万5000人。犯罪の増加や人口の郊外への流出、自動車産業の空洞化により、デトロイトは土台から崩壊した。犯罪はまん延しており、市当局は文字通り電灯をともすこともできなくなった──現在、市内では街灯の40%が消灯している状態だ。

  「状況はもっと悪くなるだろうね」──市の予算削減計画で解雇されたロジャー・ハワードさん(55)は、この街の未来をそう予想した。(c)AFP/Joe Szczesny