【7月23日 AFP】野生のバンドウイルカは個体特有の音を編み出し、自分を識別する「名前」のように使っているとする論文が22日、米科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of SciencesPNAS)に掲載された。

 研究の対象となったのは、英スコットランド東岸沖に生息するバンドウイルカ200頭。

 英セント・アンドリューズ大学(University of St Andrews)生物学部、海洋哺乳類研究ユニット(Sea Mammal Research Unit)に所属する論文の主著者、ステファニー・キング(Stephanie King)氏は、「動物の世界で名前、あるいは特定の個体に対する呼びかけが行われていることを示す、初めての証拠だ」と話す。

 イルカが生後数か月の間に個体特有の音、あるいは名前を作り出すことは、これまでの研究で明らかになっている。イルカは泳ぎ回りながら、時間をかけて自分の存在を周りに知らせるという。キング氏によると、野生のイルカの発する鳴き声の約半分が、個体特有の音だという。

■自分の「名前」が呼ばれると即座に応答

 キング氏率いる研究チームは、イルカが自分特有の音を他のイルカが発した時にどのような反応を示すかについて疑問を持った。

 そこで、研究チームはイルカの群れの鳴き声を録音し、各個体特有の音を一つ一つ再生してイルカに聞かせた。「おもしろいことに、イルカは自分特有の音が仲間から発せられた時に限り反応を示した。即座に鳴き返し、時には何度も鳴き返すこともあった。だが、他の鳴き声を聞いた時には一切そのような反応を示さなかった」とキング氏は説明する。

 研究チームは、イルカの声をそのまま使ったり、あるいは別のイルカが「名前」を呼んでいるかのように元々の声の特徴をすべて排除したり、さまざまな方法で個体特有の音の再生を繰り返した。また、異なる群れのイルカが発する聞きなれない鳴き声と、同じ群れのイルカが発する個体特有の音をイルカに聞かせた。その結果、「イルカは自分特有の音が真似された時に鳴き返しており、しかも即座にそうしていた。他の音を聞いた時にはそのような反応を示さなかった」という。

 キング氏は、今回の研究結果は、イルカが群れの中で互いに名前で呼び合うことを示すものだと指摘する。

 イルカの鳴き声の約半分が「名前」を呼ぶものだとみられることから、次の大きな課題は彼らが他にどんな会話をしているのか見つけ出すことだとキング氏は話す。「イルカが発する鳴き声の半分は、何のためのものかわからない。それが、イルカの伝達方法を研究する上での次のステップだ」(c)AFP/Kerry SHERIDAN