【7月8日 AFP】遺伝子配列解析の新技術「次世代シーケンス」を用いて体外受精(IVF)における生存能力の高い胚を選択し、健康な男児が誕生したとする論文が7日、英ロンドン(London)で開かれた欧州ヒト生殖学会(European Society of Human Reproduction and EmbryologyESHRE)の会議で発表された。

 IVFは確実性が低く、受精した胚を子宮へ移した後に妊娠へ至る確率は約30%程度にとどまっている。成功率が低い理由ははっきりしていないが、論文をまとめた研究者らによると、遺伝的欠陥が1番の原因と考えられている。

 全ゲノムの塩基配列(シークエンス)を解析する「次世代シーケンス」(NGS)は最新技術によって遺伝子疾患や、染色体の異常や突然変異を明らかにする。

 英国立健康研究所(National Institute for Health Research)が出資する英オックスフォード生物医学研究所(Oxford Biomedical Research Centre)に所属する論文の主著者ダガン・ウェルズ(Dagan Well)氏はこの新技術について「本質的により安価」な上、従来の方法よりも多くの遺伝データを得ることができると語っている。

 ウェルズ氏は研究の中で異常のある胚にこの手法を試し、満足のいく正確性が得られた後に、IVFを試みていた夫婦2組にこの手法を採用した。母親にあたる女性の年齢はそれぞれ35歳と39歳で、1人は流産の経験があった。

 新技術により片方の夫婦では健康な胚盤胞(形成初期の胚)が3個、もう1組では2個特定された。女性の子宮にそれぞれ1個の胚を移植し、どちらも健康な妊娠状態に至った。1人の女性は6月にすでに米ペンシルベニア(Pennsylvania)州で元気な男児を出産し、もう1人もまもなく出産する予定だという。研究では年内にさらに試験を行うとしている。(c)AFP