【6月14日 AFP】米連邦最高裁判所は13日、自然に発生するヒトの遺伝子配列は、特許の対象にならないが、人工的に転写・複製したDNAは対象になり得るという判決を、判事全員一致で下した。

 判決によると「自然に発生するDNAの断片は、自然の産物であり、単に分離されただけでは特許の対象にはならないが、相補的DNA(cDNA)は、自然に発生したものではないため、特許の対象になる」という。

 最高裁判事9人は今回の判決に先立ち、バイオ企業のミリアド・ジェネティクス(Myriad Genetics)が特許を取得している2つの遺伝子に関する2012年の米控訴審判決を再審理した。控訴審は、乳がんと卵巣がんとの関連性があることをミリアドが発見した遺伝子「BRCA1」と「BRCA2」に対する同社の特許を認める判決を下していた。

 米女優アンジェリーナ・ジョリー(Angelina Jolie)さんは最近、このBRCA1遺伝子に変異があるために乳がんを発症するリスクが通常より高いことが分かり、予防措置として両乳房の乳腺切除手術を受けた。

 訴訟は、米国自由人権協会(American Civil Liberties UnionACLU)や15万人以上の研究者、医師、患者らが、特許対象の遺伝子を使用した今後の研究・調査の妨げになるとして、先の控訴審判決を覆すよう最高裁に申し立てたもの。今回の判決は、科学界側の勝利となった。

 ミリアドは、BRCA1、BRCA2の遺伝子に対する遺伝子検査を提供している。1990年代になされたこれら2遺伝子の発見は、通常は長年の努力と多額の投資が必要な研究活動の産物だ。判決は、ミリアドが「重要で有用な遺伝子を発見したが、画期的、革新的で、卓越した発見でさえも、それだけで(特許法の)条件を満たすわけではない」としている。

 だが今回の判決は、ミリアド側の部分的な勝利ともみられている。判決の知らせの直後、同社の株価は急騰した。相補的DNAと定義される他の遺伝子パターンの特許権を保持できることになったからだ。同社は交流サイト(SNS)・フェイスブック(Facebook)の自社ページで、「最高裁の判決によって、無効になる特許請求もあり、守られるものもある」と述べている。

 女性が乳がんや卵巣がんにかかりやすくなる遺伝子の変異を持っているかどうか確認するための検査については、研究者らはこれまで、ミリアドの検査よりも効果的な診断が可能と思われる代替検査の開発に成功していない。

 ヒト遺伝子の20%近くは既に特許登録されており、この中にはアルツハイマー病やその他のがんに関連するものが含まれる。これらの特許は、民間企業だけでなく、大学や研究機関も所有している。こうした大学や研究機関は、特許を企業に占有させないようにするため、パブリックドメインとして公開する取り組みを行っている。(c)AFP/Chantal Valery