【6月11日 AFP】日本の政界で、カジノ合法化に向けた動きが本格化している。解禁されれば収益規模で世界的なカジノ都市、マカオ(Macau)と競う水準になるとも予想されている。

 超党派の「国際観光産業振興議員連盟」の岩屋毅(Takeshi Iwaya)会長代行(自民党衆議院議員)はAFPのインタビューで、カジノ法案は今年末までに国会に提出される予定で、通過すれば、全国各地でのカジノ建設計画で業界大手と提携する道が開かれると話し、先進国の中でカジノがないのはたぶん日本だけだが、ゴールに向けて全力を挙げていると述べた。

 カジノ解禁をめぐる議論は過去数年、何度か浮上しているが、いずれも具体的な動きには至っていない。アナリストらは、政権交代や安倍政権が掲げる景気刺激策は、日本のカジノ合法化にとってかつてないほどの原動力になるとみている。

 証券大手CLSAはレポートで「カジノ法案が国会を通過すれば、その影響は極めて大きい」と分析。「法的に認められた賭博産業の規模で日本は世界有数となる可能性がある。おそらくマカオに次ぐ規模だ」と述べた。CLSAの試算によると、東京2か所と大阪1か所のカジノリゾート事業は合計で年間100億ドル(約9900億円)の収益を生むという。

 米調査会社Galaviz & Coのジョナサン・ガラビズ(Jonathan Galaviz)氏は、全国にホテルやショッピングセンター、エンターテインメント施設を併設するカジノリゾートが全国各地で開業すれば、収益は大きく伸びると述べ、カジノ産業の規模は「制約を受けずに成長できるとしたら、長期的には1000億ドル(約9兆9000億円)近くになる」可能性があるという予想を示した。

■国民はギャンブル依存症や組織犯罪の関与に警戒感

 賭博産業は過去数十年にわたりアジア全域で急成長してきた。シンガポールにある2か所のカジノリゾートは紛れもない成功を収めており、2012年は合計で約53億ドル(約5200億円)の収益を上げた。

 旧ポルトガル領マカオは今や世界最大のカジノ都市。主に、大金を賭ける中国人VIPの投資を支えに、米ラスベガス・ストリップ(Las Vegas Strip)の6倍以上の収益を生み出している。12年の収益は、中国の経済成長が鈍化した影響で前の年から伸びが鈍化したものの、過去最高の380億ドル(約3兆8000億円)を記録した。フィリピンとベトナムも巨大リゾート施設建設でアジア地域の市場シェア獲得をもくろんでいる。

 日本は、豊かさに加え、地理的に中国と非常に近いこと、競馬やサッカーくじなど合法ギャンブルが人気を集めていることから、長い間、アジアの賭博の「聖杯」とみなされてきた。パチンコ産業の年間売り上げは2000億ドル(約19兆8000億円) を超えていると推定される。出玉は特殊景品に交換した後、景品交換所で現金化できるが、これは違法にはならない。

 CLSAは「カジノ法案は日本でこれまで何度も議論されてきたが、実現していない」と指摘する。だが、自民党が昨年12月の総選挙で地滑り的勝利を収め、見通しが変わってきている。安倍晋三(Shinzo Abe)首相は大規模な財政出動により長引く不況からの脱却を目指すと同時に、先進国で最大の公的債務をめぐる問題に取り組んでいる。日本はまた、低下しつつあるアジアの中心地としての地位回復や、11年の東日本大震災で打撃を受けた観光業の復興を目指している。

 国際観光産業振興議員連盟の岩屋会長代行は、日本の国民がギャンブル依存症や組織犯罪の関与に警戒感を持っていることが、現時点で日本にカジノが存在しない主な理由だと述べ、カジノ解禁はまだ決まったわけではないとの認識を示した。 (c)AFP/Peter Brieger and Shingo Ito