【5月22日 AFP】フランス・パリ(Paris)のノートルダム大聖堂(Notre Dame Cathedral)内の祭壇前で21日、極右活動家で作家の男性が銃で自殺した。男性は同国のアイデンティティーを守るため、「目を見張るような」行動を呼び掛けていた。

 警察はこの男性の身元を、同国の極右国家主義グループにつながりを持つ活動家でエッセイストのドミニク・ベネール(Dominique Venner)氏(78)と確認した。

 極右政党である国民戦線(Front NationalFN)のマリーヌ・ルペン(Marine Le Pen)党首は、ベネール氏の自殺を政治的な意思表示だったとして、マイクロブログのツイッター(Twitter)で「自らの最期の突出した政治活動を、フランス国民を目覚めさせることにささげたドミニク・ベネール氏に大きな敬意を表する」と記した。ただ後にルペン氏は、「わが国は生きて希望を持ってこそ、再生を果たし自らを救済する」と付け加えた。

 警察によると、ベネール氏は午後4時(日本時間同日午後11時)すぎに拳銃で自殺。当時大聖堂内に居た約1500人は、その後無事に避難した。

 ベネール氏はこれまで長きにわたり、右派的なエッセーや軍事史の他、武器や狩猟に関する書籍を出版してきた。

 同日、自身のホームページに掲載された最後のエッセーで同氏は、同性婚および同性カップルによる養子縁組を認める「下劣な法律」を同国が成立させたことを猛烈に非難し、政治活動家に対し「フランスと欧州のアイデンティティー」を守るための手だてを講じるよう呼び掛けた。さらに、「この寝ぼけた状態をふるい落とし、われわれの原点の記憶を呼び覚ますには、新手で目を見張らせるような、象徴的な意思表示が確実に求められている。有言実行しなければならない時に来ている」とも記しており、これが自殺に言及しているという見方もある。

 同大聖堂のパトリック・ジャカン(Patrick Jacquin)司教はAFPに対し、ベネール氏が自殺の前に祭壇に手紙を置いていたことを明らかにした。警察筋によると、その手紙には同氏ホームページの記載に類似した内容が書かれていたという。

 ベネール氏の出版担当者は、6月に出版が予定されている同氏の次作のタイトルが「西のサムライ(原題)」であることを明かし、同氏の自殺が、1970年に切腹自殺した日本の「三島由紀夫(Yukio Mishima)に近似するような、極めて強く象徴的な力を持った」と述べた。(c)AFP/Remy Bellon