【5月24日 AFP】熱い1杯のセイロン紅茶は気持ちを休めたいリラックスタイムに最適な飲み物だが、その産地スリランカは現在、最も利益となっている輸出品のセイロン紅茶を高級な強精飲料として売り出そうとしている。

 場所によっては水よりも安く売られていると製造業者がいうセイロン紅茶への認識を劇的に変えるべく、スリランカの紅茶業界は、セイロン紅茶にあるとされる「媚薬効果」の宣伝に力を入れている。

   「最近では、寝室での元気づけに効果的という側面を強調して紅茶を販売しています」と話すロハン・フェルナンド(Rohan Fernando)氏率いる飲料メーカー、HVAフーズ(HVA Foods)では60グラムの小分け瓶入り高級セイロン紅茶を350ドル(約3万6000円)で売っている。「元来、紅茶は貧しい人たちの飲み物とされてきましたが、私たちは最高級の紅茶を供給したいのです」

 業界はまだ医学的に確かな証拠は手にしていないが、セイロン紅茶の強精効果については、古くからスリランカの紅茶愛好家の間で語り草となってきた。

 フェルナンド氏によれば中でもそうした効果で知られるのは、シルバーチップやゴールデンチップなどホワイトティー(白茶)の上級茶で、最近では裕福な中国の実業家や、サウジアラビアや日本の富裕層の間で好評だという。通常の紅茶とは異なり、白茶類は柔らかい新芽だけを集め、銀色や金色になるまで天日で丁寧に自然乾燥する。

■ポリフェノールや抗酸化物質……免疫力や血行にも

 最大都市コロンボ(Colombo)北方のカンダナ(Kandana)にある自社工場でフェルナンドさんは、金色のリボンで口を閉じた黒いビロードに包まれていた陶器を開けて紅茶を見せ、効果は強精だけに限らないと説明を始めた。紅茶に含まれるポリフェノールやフラボノイド、抗酸化物質はみな免疫力を高め、血行を良くすることで知られる。

 同国有数の紅茶生産者ハーマン・グナラトナ(Herman Gunaratne)さんも、生産している希少な「バージン」ホワイトティーが持つそうした効果の売り込みに積極的だ。通常、紅茶の茶葉は手で摘むが、この紅茶は一切、人の手に触れることはないため「バージン」の名がついており、仏高級紅茶専門店マリアージュフレール(Mariage Freres)で20グラム缶が88ドル(約9000円)で販売されている。

 グナラトナさんはAFPの取材に「われわれのバージン・ホワイトティーには、抗酸化物質が10.11%も含まれています。これは、あらゆるお茶類の中で最も高い数字です」と胸を張る。「全般的に健康状態が向上すれば、自然と精力も高まるでしょう」

 グナラトナさんは、残留農薬などの有害物質が一切ない「清き紅茶」というスリランカ産の名声を守ろうとする純粋主義者の1人だ。とりわけ従来行われてきた安価な大量生産品の輸出よりも、高級茶葉に注目している。「スリランカ紅茶の再ブランド化が必要なんです。そうすれば紅茶による収入を4倍にも伸ばすことができる」

 スリランカ政府紅茶局(Sri Lanka Tea Board)も数十年ぶりに大規模な国際販促キャンペーンを展開し、高級紅茶の健康効果を前面に出して宣伝する計画だ。

 紅茶葉はスリランカの主要輸出品目で、昨年の輸出額は15億ドル(約1500億円)に上っている。(c)AFP/Amal Jayasinghe