【5月10日 AFP】台湾の漁船がフィリピンの沿岸警備隊に銃撃され、台湾人乗組員1人が死亡した9日の事件について、フィリピン当局は10日、自国の沿岸警備隊が台湾漁船を銃撃したことを認めた。事件について台湾外交部(外務省)は9日、台湾の南方300キロの海上で操業していた台湾漁船「広大興28号(Guang Ta Hsin 28)」がフィリピン当局の船から銃撃され、台湾人船員1人が死亡したと発表していた。

 フィリピン沿岸警備隊の報道官を務めるアルマンド・バリロ(Armand Balilo)中佐によると、全長30メートルのフィリピン沿岸警備隊の船が最初に漁船2隻を発見し、接近しようとした。すると2隻のうち、より小型の漁船が体当たりを試みたため、フィリピン側が発砲した。機械類を狙い、漁船を不能にすることに成功したが、人を撃ったという認識はなかったと述べた。また白くて巨大な船体の3隻目が現れたため、脅威を感じ現場海域を離れたという。

 ただしバリロ中佐は、事件がフィリピン領海内であるバリンタン海峡(Balintang Channel)のルソン(Luzon)島北方で起きたもので、警備隊は違法操業の阻止という任務を適切に遂行したとの見解も示している。

 事件について台湾外交部は10日、「フィリピン政府の公船がわが国の漁船を攻撃したことに対し強い抗議と非難を表明し、フィリピン政府に公式な謝罪と殺人を犯した者の身柄確保、さらに賠償を要求する」との声明を発表した。馬英九(Ma Ying-jeou)総統も同日、フィリピン側に公式謝罪を要求した。

 台湾メディアも事件をめぐる報道を続けており、フィリピン側を強く非難。またフィリピン領海には入っていないとする船長の発言、さらには死亡した65歳の乗組員が船長の父親だったことなどを報じた。船長は、フィリピン側からは数回にわたって銃撃があり、燃料タンクにも当たったと述べている他、船長の救助要請によって付近の台湾漁船2隻が駆け付け、台湾南部の港に漁船を帰港させたと話している。(c)AFP