【5月9日 AFP】イタリア・ベネチア(Venice)のカナル・グランデ(Grand Canal、大運河)入り口に設置され、住民などの間で賛否両論を巻き起こしていたカエルを持った少年の裸像が8日、撤去された。芸術愛好家からは批判が噴出している。

 この高さ約2.4メートルの白い像は、フランスの富豪で美術品収集家のフランソワ・ピノー(Francois Pinault)氏の依頼で、米国人芸術家チャールズ・レイ(Charles Ray)氏が制作したもの。ベネチア市内の現代美術館「プンタ・デラ・ドガーナ(Punta della Dogana)」の外に、対岸のサンマルコ広場(Piazza San Marco)を望むようにして4年前に設置された。税関の建物を改装して作られたこの美術館には、ピノー氏のコレクションが多数展示されている。

 像の撤去後は、かつてその場に置かれ、住民たちに愛されていた19世紀の街灯のレプリカが設置される予定だ。だが、美術評論家のフランチェスコ・ボナーミ(Francesco Bonami)氏は伊紙スタンパ(La Stampa)で、「かわいそうな少年の唯一の罪は、現代的だったことだ」と述べ、像撤去は現代美術に対する拒否反応だと批判した。

 作者のレイ氏は過去のインタビューで、カエルの足を持ち上げ見つめる少年の像は、好奇心と恐れ、嫌悪が混ざった感情を表現していると語っている。

 だがベネチア市民の間では、かつて若いカップルのロマンチックな待ち合わせ場所だったこの一角を台無しにしたとして、評判が悪かった。一方で、像は設置後すぐに観光客の人気記念撮影スポットとなった。

 レイ氏は像の恒久設置を望んでいたが、地元議会はもともと一時的な展示だったと述べ、批判の圧力を受けてこの像を撤去したわけではないとしている。この像が最終的にどこに行き着くのかはまだ分からない。(c)AFP