【5月3日 AFP】パキスタンで14人の死者を出した連続爆弾攻撃に関連したスパイ行為の罪で16年前に死刑が確定していたインド人のサラブジット・シン(Sarabjit Singh)死刑囚(49)が2日、死亡した。同死刑囚は約1週間前、他の受刑者から暴行を受けていた。暴行事件からまもなく殺人罪で訴追された受刑者らについて、インド政府は、パキスタン当局による公正な裁きを求めている。

 パキスタン北部ラホール(Lahore)の病院関係者がAFPに語ったところによると、同市内の刑務所に拘置されていたシン死刑囚は、先月26日、他の6人の受刑者から激しい暴行を受けた後、昏睡状態に陥っていた。受刑者らは頭蓋骨が粉砕するほど、頭部をレンガで殴りつけたという。

 シン死刑囚の死亡を受けて、インドのマンモハン・シン(Manmohan Singh)首相は、マイクロブログのツイッター(Twitter)の公式ページに、「この野蛮で殺意に満ちた暴力行為に及んだ犯罪者らは、法の裁きを受けなければならない」と投稿した。

 インド政府は、パキスタン当局が生死の淵をさまようシン死刑囚とインド外交官らとの面会を拒否したと批判していた。シン首相も、「この件を人道的観点から捉えてほしい」という訴えを、パキスタン側が聞き入れてくれなかったことは「非常に残念だ」と話している。

 インド北部パンジャブ(Punjab)州にあるシン死刑囚の故郷の村では、怒った人々が抗議集会を開き、パキスタンの国旗に火をつけた。

 一方、パキスタン側は、インド領事館の担当者によるシン死刑囚への定期的な面会は許可されていたと主張。また、担当の医師らは、同死刑囚が心停止で死亡するまで、治療に手を尽くしたと話した。

 警察関係者がAFPに語ったところによると、暴行事件の直後には2人の受刑者が拘束され、その後、殺人罪で訴追された。動機はまだ明らかになっていないが、警察当局によると、初期捜査の結果、受刑者らとシン死刑囚との間で口論が起きていた可能性が示唆されたという。

 シン死刑囚は1990年にパキスタンのパンジャブ(Punjab)州で起きた連続爆弾攻撃に関与したとして、死刑判決を受けた。だが家族は、同死刑囚は農業従事者であり、酒に酔って国境を越えたことで、他人と間違われてしまったのだと主張していた。(c)AFP/Waqar Hussain