【3月25日 AFP】香港(Hong Kong)で働く約30万人の外国人メイドに永住権を認めるべきか否か――香港市民を二分する議論を引き起こした法廷闘争で、香港終審法院(最高裁判所に相当)は25日、外国人メイドの永住権取得を認めない判決を下した。

 この裁判は、1986年から香港で家政婦として働いているフィリピン人のエバンジェリン・バナオ・バレオス(Evangeline Banao Vallejos)さんが2年前に起こしたもの。香港在住の外国人は連続7年の滞在後に永住権と投票権を得ることが可能だが、メイドなど家庭内労働者はこの権利から除外されている。

 香港の高等法院(高等裁判所)は2011年、外国人メイドの永住権獲得を禁止する法律が香港の憲法にあたる基本法に違反すると判断し、バレオスさんには永住権取得を請求する権利があるとの判決を下した。しかし香港当局は、既に人口過密の香港に人々がさらに押し寄せることになるとして上告していた。

 香港終審法院は25日の判決で、「外国人家庭内労働者は契約完了時に母国に帰国する義務があり、当初から香港に来るのは永住目的ではなく、扶養家族を香港に連れてくることもできないとの条件で入国を認められている」と指摘。メイドの永住権取得は認められないとの判断を示した。
 
 また、この法廷闘争をめぐっては、香港当局が移民問題について中国中央政府の助言を求めると提案したことに対し、香港の司法の独立性を脅かす行為だと批判が起きており、新たな論争に発展する可能性もあったが、終審法院は中国政府に最終判断を仰ぐ必要性はないとの見方も示した。

 判決を受け、移民労働者の権利保護団体「AMCBAsian Migrants' Coordinating Body)」の広報担当者、イーマン・ビラヌエバ(Eman Villanueva)氏は「きょうの判決で、終審法院は香港の外国人家庭内労働者に対する不公正な待遇と社会からの排除に司法のお墨付きを与えた」と述べている。

 香港の外国人メイドは、週休1日で最低賃金は月3920香港ドル(約4万8000円)ほどだが、労働者権利保護団体によればさまざまな権利から除外されているうえ、雇用主からの虐待に対する法的な保護措置も十分ではないという。(c)AFP/Beh Lih Yi