【3月13日 AFP】喫煙や過食、運動不足といった現代の悪習慣と関連づけられることの多い動脈硬化だが、紀元前2000年ごろのミイラをスキャン検査したところ、古代の人々にも動脈硬化があったことが明らかになった。11日の英医学専門誌「ランセット・ニューロロジー(Lancet Neurology)」に掲載された。

 論文の共同執筆者で心臓専門医のランダル・トンプソン(Randall Thompson)氏によると、心臓発作や脳卒中を引き起こすアテローム性動脈硬化症に関する一般的な考えは「動脈硬化の程度は圧倒的に生活習慣に関わるもので、産業革命以前やさらには農耕以前の生活様式を真似ることができれば避けられる」というものだ。

 しかし今回の研究は、近代以前の人類にアテローム性動脈硬化症がみられたということは、この症状が人間の加齢に付き物な要素であり、特定の食習慣や生活様式と関連するものではないことを示していると結論づけている。

 研究チームは、現在の診断方法と似た全身CTスキャンで、エジプト、ペルー、米国南西部、アラスカの世界の4地域から発見されたミイラ137体を調査した。対象となったミイラの年代は紀元前2000年ごろの古代エジプトから、狩猟生活をするアラスカの先住民族ウナンガン(Unangan)の1930年代まで、約4000年に及んだ。このうち3分の1のミイラが「おそらく、または完全に」アテローム性動脈硬化症と診断された。また硬化が見つかった場所や外形も現代人と同じで、高齢になるほど硬化症の兆候が高いところも同じだった。

「この疾患が、生活様式や食習慣、遺伝的特徴が異なる古代の複数の文化で、広範な地域にわたって共通したものであり、また人類の歴史の非常に長い期間を越えて共通であることが初めて示された」と論文は述べている。

 調査対象となった古代の人々の食習慣は、魚介類から狩りの獲物や家畜の肉類、木の実から穀物、豆・芋類と多岐にわたっていた。エジプト人に至ってはビールやワインも飲んでいた。菜食だけだったとされているグループは一つもなく、身体活動は多かったと思われる。また多くの集落で、料理や暖房のために屋内で火が焚かれていたことから、煙の吸引が影響を及ぼした可能性はあるという。
 
 ただし欧州心臓病学会(European Society of Cardiology)のグレーテ・テル(Grethe Tell)氏は、「動脈硬化のある人の全員が疾患にかかるわけではない」と述べ、不健康なライフスタイルが心臓発作や脳卒中のリスクを高めることが、今回の発見で否定されるわけではないと注意を促している。(c)AFP/Mariette LE ROUX