【2月19日 AFP】ロシアのウラル(Ural)地方を先週襲った隕石(いんせき)のような宇宙物体を検知できる小惑星警告システムの開発が、米航空宇宙局(NASA)や大学、民間グループによって進められている。

 NASAは、ロシアで1000人以上の負傷者を出したこの隕石の直径を17メートルと推定している。

 日本時間で隕石落下の翌日に当たる16日には、直径45メートルの小惑星「2012 DA14」が地球をかすめた。もし地球に衝突していれば、大都市が1つ消え去るほどの大きさだ。

■地球付近には50万個の小惑星

 10年前だったら、NASAはこの小惑星を検知することができなかっただろうと最近語ったのは、NASAの地球近傍天体(NEO)プロジェクト責任者、リンゼー・ジョンソン(Lindsey Johnson)氏だ。だが同氏によると、NASAの小型小惑星探知能力は以前より向上しているという。

 ジョンソン氏によれば、地球の周辺には多くの小型小惑星が飛び回っており、その数は50万個ほどともされるが、サイズが小さいために検知するのは難しい。

 NASAのNEOプログラムは現在、地上や衛星の観測機器を用い、地球に接近する小惑星や彗星(すいせい)の検知と追跡を行っている。科学者らはこれら天体の質量と軌道を推測し、危険性を見積もる。

 このシステムでは、プエルトリコのアレシボ(Arecibo)天文台が持つ、直径305メートルのアンテナを搭載した電波望遠鏡を使い、夜空の3分の1の領域を高感度で観測し、比較的大きな小惑星を検知することができる。

 世界で行われる小惑星の観測結果は、たとえアマチュア天文家によるものであっても、NASAが資金提供し国際天文学連合(International Astronomical UnionIAU)が運営する小惑星センター(Minor Planet CenterMPC)に全て報告しなければいけない。

■45メートルの物体を衝突1週間前に検知する「ATLAS」

 だが予算削減の風潮が広まる昨今、NASAは小さな天体に特化した検知システムの開発を進めており、ハワイ大学(University of Hawaii)のプロジェクト「小惑星地球衝突最終警報システム(Asteroid Terrestrial-impact Last Alert System)」、通称「ATLAS(アトラス)」に500万ドル(約4億6000万円)を出資している。

 2015年にも実施の可能性があるATLASは目に見える範囲の夜空を毎晩監視するプロジェクトで、研究者らによると、直径45メートルの物体であれば地球に衝突する1週間前に検知することができる。ATLASプロジェクトに携わるジョン・トンリー(John Tonry)氏は、最終的な目的は、人々を守るための対策に必要な時間を確保するための天体の早期検知だと説明する。

 一方で、NASAの取り組みでは不十分だと主張する元宇宙飛行士や科学者らは昨年、小惑星を検知し人類を守ることを目的とした史上初の民間宇宙望遠鏡の実現に向け、資金調達や建造、打ち上げを行う財団「B612」を立ち上げた。

 同財団は、宇宙望遠鏡の建造と配置のため、4億5000万ドル(約417億円)の資金調達を目指している。「センティネル(Sentinel)」と名付けられる予定のこの望遠鏡は、地球から2億7300万キロメートル離れた太陽の公転軌道に乗せられ、通常は観測不能な天体の大半を検知することができるという。(c)AFP/Jean-Louis Santini