【2月4日 AFP】心臓の冠動脈が急に閉塞したり狭くなったりすることで引き起こされる急性冠症候群(ACS)は独身者よりも既婚者のほうが少なく、回復する確率も高いとするフィンランドの研究チームによる論文が1月31日、「European Journal of Preventive Cardiology(欧州予防心臓病学ジャーナル)」に掲載された。

 研究チームはフィンランドで1993年から2002年の間に心臓発作などの「急性冠動脈イベント」を経験した35~99歳の1万5330人の症例を調べた。半数をやや上回る人が発作から28日以内に死亡していた。

 既婚、未婚の別でみると、急性冠動脈イベントの発生数は全ての年齢層で独身男性のほうが既婚男性よりも58~66%高かった。女性では婚姻の有無による差はさらに大きく、独身女性の発作の割合は既婚女性より60~65%高かった。

 急性冠症候群による死亡率も、男性、女性双方で既婚者の方が低いことが分かった。発作から28日以内に死亡する確率は、既婚者と比較して独身男性が60~168%、独身女性は71~175%高かった。 

 研究チームは、夫婦が仕事をしている場合などもあり既婚者の方が収入が多く、生活習慣も健康的で、頼れる人的ネットワークが広いためではないとみている。

 結婚生活がもたらす幸福感といった心理的側面も軽視できないという。研究を主導したトゥルク大学病院(Turku University Hospital)のアイノ・ラミンタウスタ(Aino Lammintausta)氏は「独身者は(既婚者よりも)抑うつな気分になることが多いことが分かっている。そしてこれまでの研究で抑うつ感が心血管に起因する死亡率に悪影響を及ぼすことが示されている」と言う。

 研究対象になった人の人種や社会的背景はさまざまだったことから、この研究で示された傾向は他の欧米諸国にもおおむね当てはまるのではないかと述べた。ただしこの研究は人口統計データに基づいて行われたため、同居している未婚のカップルについて直接調べることはできなかった。(c)AFP