【1月25日 AFP】西アフリカ・マリ北部の世界遺産都市トンブクトゥ(Timbuktu)を制圧していたイスラム過激派が24日までに退去し、街はゴーストタウンと化していることが、地元住民や当局者の話で明らかになった。市内ではここ3日間にわたり電気や水道が止まっているという。

 地元自治体関係者は「水がない。住民やイスラム過激派は去った。街はゴーストタウンだ」と語った。地元治安当局筋によると、イスラム過激派はマリ北東部のキダル(Kidal)地域に兵力を集めているという。トンブクトゥを制圧していたイスラム過激派は発電機で電気と水を供給していたが、フランス軍の空爆で燃料庫が破壊されたこともあり、過激派が去った今、街には何も残っていない状況という。

 トンブクトゥ近郊には、かつて隣国リビアの元指導者、ムアマル・カダフィ(Moamer Kadhafi)大佐が所有していた別荘があり、「イスラム・マグレブ諸国のアルカイダ組織(Al-Qaeda in the Islamic MaghrebAQIM)」が主要拠点としていたが、仏空軍部隊が20日夜、この拠点を空爆し建物を破壊した。

 首都バマコ(Bamako)から900キロ離れたサハラ砂漠(Sahara Desert)の端に位置する伝説の交易都市トンブクトゥは、数百年間にわたりイスラム教徒の学びの地として栄え、西洋世界ではその名前は「遠くはなれた異国の地」を意味する言葉として使われるようになった。だが、世界遺産に登録されている宗教遺跡の数々は、街を占拠したイスラム過激派に破壊されてしまった。国連教育科学文化機関(ユネスコ、UNESCO)は「悲劇」として破壊行為を非難している。

■空爆続く、過激派の一部から和平交渉要求も

 一方、フランス軍は25日朝にかけてマリ北部のイスラム過激派の拠点2か所を空爆し、破壊した。匿名のマリ軍情報筋によると、仏軍機は北部の主要都市ガオ(Gao)から80キロメートル離れたアンソンゴ(Ansongo)と、Seyna Sonrai村近くの過激派拠点を空爆し、作戦は成功したという。

 また、隣国ニジェールとの国境にアフリカ諸国からの派遣部隊が集結する中、イスラム勢力側に分裂の動きも出ている。トンブクトゥを支配していたイスラム系反政府勢力「アンサール・ディーン(Ansar Dine)」の一部メンバーが24日、離脱を表明。マリ人のみで構成されているとする新組織を立ち上げ、「あらゆるテロリズムを拒否する」と主張してマリ、フランス両政府に「平和的解決」を呼び掛けている。(c)AFP