【1月24日 AFP】ルーマニア警察当局の新交通安全キャンペーンに、野良犬が採用された。「彼らにできるなら、誰にだってできる──横断歩道を渡ろう!」。こんなキャッチフレーズとともに流れるテレビ・コマーシャルには、ルーマニア国内の複数の都市で撮影された横断歩道を渡る野良犬たちが登場する。

 ルーマニア交通警察のルシアン・ディニータ(Lucian Dinita)長官は、「動物だって重要な安全ルールを守ることができるという素晴らしいメッセージを、この野良犬たちは伝えてくれている」とAFPに語った。

 警察によるとルーマニアでは、昨年1年間で歩行者側の交通違反で360人が死亡し、1200人が負傷した。今回のキャンペーンの企画に携わった広告会社「ネクスト・アドバタイジング(Next Advertising)」のSemida Durigaクリエイティブディレクターは「横断歩道を渡らなかったというだけで、こんなに多くの人たちが交通事故で亡くなった事実にショックを受けた」と話す。

「そのとき、ブカレスト(Bucharest)でよく目にする光景が思い浮かんだんです。犬が横断歩道を渡ったり、横断歩道の前で車道信号が赤に変わるのを待っている。野良犬たちは交通安全について習ったわけではない。直感的に、そうしたほうが安全だと認識しているのです」(Duriga氏)

 当局や動物愛護団体によると、人口200万人のブカレストに暮らす野良犬は約4万匹。共産主義体制下で独裁者だったニコラエ・チャウシェスク(Nicolae Ceaușescu)大統領(当時)が1980年代に市内の古い居住区を取り壊し集合住宅地区に置き換えたことで、ペットを飼えなくなった飼い主が相次ぎ、野良犬の数が増えた。

 2001年~07年には大々的な野良犬の安楽死キャンペーンも行われたが、現在でも野良犬はルーマニアの日常風景と化している。多くは動物愛護団体や犬好きの人たちの手で餌を与えられ、予防接種を受けている。(c)AFP