【1月18日 AFP】南アフリカ北部リンポポ(Limpopo)州で、狩猟用に飼育されていたライオンが猟獣保護区の金網から逃げ出したまま1週間も捕獲されず、近隣の小さな町マカド(Makhado)の住民は恐怖におびえている。

 17日に地元警察が明らかにしたところによると、逃げ出したのは「頭の大きい成体の雄ライオン」1頭。警察が行方を追っているが既に1週間も逃亡を続けており、最後に目撃されたのは16日だが捕獲には失敗。住民たちはいつ、どこでライオンに襲い掛かられるか分からない恐怖に震えているという。

■ライオンは「家畜」?

 南アフリカには推定で約8000頭のライオンが生息するが、このうち野生は約3000頭で、残りは飼育下にある。近年、狩猟目的などで飼育されるライオンの数が増えており、動物保護活動家らは懸念を募らせている。

 商用繁殖されるライオンは通常、囲いの中で飼育され、動物園や趣味の狩猟向けの獲物として貸し出される。成獣になると自然に還されるライオンもいるが、その多くはトロフィーハンティング(合法的に趣味で行う野生動物の狩猟)が行われる数日前だという。

 ブリーダーたちは、ライオンを家畜とみなしている。南アフリカの狩猟用動物ブリーダー団体の会長を務めるピーター・ポンジェッター(Pieter Potgieter)氏は言う。「基本的には、ライオンも多かれ少なかれ他の動物と同じだ」

■観光用の子ライオンもやがては狩場に…

 南アフリカ・ウォルマランススタート(Wolmaransstad)近郊にある観光客向け施設ボナボナゲームロッジ(Bona Bona Game Lodge)で飼育されるライオンは毎週1回、日曜の朝に餌が与えられる。観光客は入園料80ランド(約820円)でライオンを見物でき、300ランド(約3060円)を払えば赤ちゃんライオンを抱いたり、ミルクを与えたりすることもできる。

 しかし、反狩猟活動家のクリス・マーサー(Chris Mercer)氏によれば、エコツーリズムをうたう観光地で観光客らを楽しませる子ライオンたちは、ブリーダーたちから貸し出されたものだ。観光地では子ライオンが成長すれば野生に戻すと約束しているが、マーサー氏は「彼らが野生に還されることはない」と断言する。「ブリーダーの元に返され、狩猟愛好家の標的となるだけだ。観光客たちはこうした事実を知るべきだ」

 飼育された末にトロフィーハンティングで殺されるライオンは、毎年およそ500頭。「トロフィーハンター」の多くは米国人だ。

 飼い慣らされ、ある日突然、自然に放たれたライオンたちがハンターたちから逃れるすべはほぼない。だが愛好家らは、狩猟の慣習は正当なものだと主張する。ブリーダーのポンジェッター氏は「殺されるのがウシやヒツジやブタだろうが、ライオンだろうが全く同じことだ。動物だというだけだ」と語っている。(c)AFP