【1月15日 AFP】北京(Beijing)の街がスモッグで覆われるなど、中国で危険なレベルまで進んでいる大気汚染に対する国民の怒りの声に、とうとう国営メディアも加わり、行政の透明性と同国の急激な開発スピードに対する疑問を投げ掛けている。

 中国では、環境を犠牲にした急速な都市化と大規模な経済開発が進んでおり、インターネット上ではこうした中国の近代化プロセスの見直しを求める声が上がっている。

 先週末には中国北部の広い地域で濃いスモッグが立ち込め、一部地域では視界が100メートルにまで悪化し、空の便の欠航が相次いだ。報道によると、北京では一時的な公害対策として市内数十か所の建設現場や自動車工場で作業が中断された。

 北京市内2か所の中核病院の医師らによると、呼吸器系の異常を訴える患者はここ数日で急増したという。

 街がスモッグで覆われる中、発表された市当局の測定結果によると、肺の奥深くまで侵入できるほどの小ささとされる微粒子「PM2.5」の濃度は1立方メートル当たり993マイクログラムと、世界保健機関(World Health OrganizationWHO)が定める基準値の40倍近くにまで上昇した。

 国営メディアは、微粒子の増加について風が弱まったことが原因とする専門家の意見を伝えた。自動車や工場が排出する有害物質が混じったスモッグは、北方と西方にある山々に遮られる形で市内に留まっているという。冬季に増える石炭の使用も要因の1つとされた。

 中国国営紙の環球時報(Global Times)は14日、当局に対し大気汚染に関するより透明性のある数値の公開を求めると同時に、政府は「問題を隠蔽(いんぺい)するという従来のやり方」を改め、事実を公表するべきと社説に記した。中国当局は、環境汚染などに関する問題を隠蔽する体質があることで知られている。

 一方、中国国営の新華社(Xinhua)通信は、中国全土に広がる「汚染ベルト」が出現したとし、「茶色の空と有毒な大気の国は間違いなく美しくない。国が直面する環境問題はますます厳しくなるだろう。過度に楽観視する理由はない」と述べて「美しい中国」を築くという当局の目標は危機的状況にあると批判した。

 14日には、中国環境保護部(Ministry of Environmental Protection)がこの問題に取り組むための対策を発表。自動車の排ガス規制を行い、クリーンエネルギーの活用を推進し、都市部の公共交通網の開発を加速させることを約束した。(c)AFP/Neil Connor