【1月5日 AFP】ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染者の体内のウイルス増殖を一時的に止める治療ワクチンを開発したと、スペインの研究チームが2日、米医学誌「サイエンス・トランスレーショナル・メディシン(Science Translational Medicine)」に発表した。

 このワクチンは、熱処理によって不活性化されたHIVに暴露された免疫細胞を基にしたもので、感染予防ではなく、感染者の治療を目的としている。HIV感染者36人を対象に試験したところ、一部の患者で体内のHIV量が劇減するなど、こうした治療法では過去最高の結果が得られたという。

 研究に加わったバルセロナ大学(University of Barcelona)臨床病院のフェリペ・ガルシア(Felipe Garcia)氏は「免疫系は自然のままではHIVを破壊しないが、われわれはそれを覚えるよう免疫系に指令を与えた」と述べている。

 12週間にわたる試験の後、ワクチンを接種した22人中12人でウイルス量が9割以上も減った。一方、ワクチンを含まない接種を受けた対照群11人では、同様の変化がみられたのはわずか1人だった。

 しかし24週間後では、ワクチンの効果は薄れ始め、同様の9割のウイルス量減少がみられたのは、ここまで残ったワクチン接種患者20人のうち7人だけだった。対照群10人ではウイルス量減少はみられなかった。

 また1年後にはワクチンの効果は消失し、患者は通常の抗レトロウイルス剤の多剤併用療法に戻らなければならなかった。

 こうした結果は、1種類の抗レトロウイルス剤でHIV増殖を抑えようとした場合と同様であり、今回の研究は「治療ワクチンは可能だとした科学論文の中で最も強固なものだ」とチームは声明で述べている。

 多剤併用療法は、長く続けると副作用が生じる可能性があるほか、患者への経済的負担が大きい。だがチームによると、このワクチンによって患者は一時的にだが、こういった負担から解放されることができるという。


 また研究チームは、今回開発したワクチンの効果について、抗レトロウイルス剤なしで長期間または生涯にわたりHIVの増殖を抑制できる「機能的完治」には達していないものの、「その目標達成に近づくための最適な治療ワクチンや、治療ワクチンを利用した複合的な治療法の可能性を開くものだ」と述べている。(c)AFP