【12月24日 AFP】中国当局のインターネット検閲システム「グレート・ファイアウオール(万里のファイアウオール、Great Firewall of China)」──このほどシステムの強化が行われたと見られており、企業からはいらだちの声、また活動家からは懸念の声が上がっている。

 中国政府が脅威とみなすウェブサイトに制限をかけるグレート・ファイアウオール。このたび行われたと見られているシステム強化では、グレート・ファイアウオールによる制限を回避するために一般的に用いられているVPN(バーチャルプライベートネットワーク)サービスについても制限の対象となったようだ。

 VPNは、中国国外にあるプロキシサーバーとデータの暗号化技術を用いて、米SNSフェイスブック(Facebook)やツイッター(Twitter)など、中国国内からのアクセスが遮断されているサイトにもアクセスすることを可能にしていた。また、企業が機密通信を行うためにも用いられてきた。

 またVPNには、5億人からなる世界最大のオンラインコミュニティーでの世論誘導や、当局から独立した社会組織の形成を規制したい中国当局の取り組みを困難にしていた側面もある。

 現在、ネットユーザーたちからは、VPNが突然アクセスできなくなったり、一度アクセス出来てもすぐにアクセス不能になるとの声が聞かれ、またVPNの速度も大幅に低下したという。

 匿名を条件に取材に応じたある欧米のビジネスマンは、「われわれにとっては大惨事だ」と語る。「グーグルドライブ(Google Drive)という、書類を複数人で同時に開いて作業し、保存・共有できるサービスを、複数のオフィスや子会社の間で使ってきた。だが、ここではそれが出来なくなった」

 中国国外に拠点を構える一部のVPNプロバイダーは、これら問題の原因が規制強化によるシステム妨害によるものと述べている。

 VPNプロバイダーのアストリル(Astrill)は、利用者に向けたメッセージの中で、グレート・ファイアウオール(GFW)に技術面でのアップデートがあったことを確認したと述べ、GFWシステムは現在「VPNプロトコルを自動で学習、発見、遮断する能力」があると述べた。

 中国のオンライン検閲活動を監視するウェブサイト「GreatFire.org」の創設者は、「中国市民に情報と通信を掌握されることを回避しようとしている」と電子メールで述べている。

■国営紙が規制擁護の社説

 中国の工業情報省にコメントを要請したが、これまでのところ返答はない。過去に中国政府は、成人向けおよび暴力的なコンテンツへのアクセスを制限し、子どもを守るために規制を行っているとしていた。

 だが、中国国営紙の環球時報(Global Times)は21日、「オンライン規制は自由と相反しない」と題した社説で、インターネットの規制を擁護した。

 フェイスブックとツイッターに自社のアカウントを保有する環球時報は、「インターネットにより生じた問題は累積している」としながら、「今こそ、インターネットを規制するべきだ」と主張した。(c)AFP/Kelly Olsen