【12月17日 AFP】ペルーとチリを舞台に来年1月に開催されるダカールラリー(Dakar Rally)によって、2000万年前のクジラやイルカの化石が深刻な損傷を被る恐れがあると、古生物学者らが警鐘を鳴らしている。既に今年のダカールラリーで、ペルー南部イカ(Ica)州のオクカヘ(Ocucaje)砂漠にある中新世の化石発掘場所に、取り返しの付かない被害が出ているという。

 ペルー古生物学研究所のビルドソ・カルロス(Vildoso Carlos)氏は、AFPの取材に「イカの損害は目に見えて明らかだ。車両が化石の上を走ったために、多くの化石が損傷した」と述べた。「(イカには)大型哺乳類や無脊椎動物の化石がたくさんあるのに。(ダカールの)コースはいわば動物たちの上を走っているのだ」

 オクカヘ砂漠では、最大で体長20メートルにもなる巨大なサメやクジラの化石が見つかっており、前年2月にも3600万年前のものとみられるクジラ類の化石が発掘されたばかりだ。

 ペルーの首都リマ(Lima)のMeyer Honninger古生物学博物館のKlaus Honninger館長は、ダカールラリー主催者に化石が損傷したことを伝えたが、ほとんど相手にされなかったと語る。同氏によれば、レース中には最短距離を走ろうと公式ルートを外れる車両があるほか、大挙して訪れる観客たちもコース付近の地域の歴史にまるで敬意を払おうとしないという。

「彼らは砂漠を悲惨な状況にして去る。クジラの椎骨をたたき割り、辺りに大量のゴミを捨てる。古タイヤを捨てて立ち去るレース参加者もいた」(Honninger館長)

 こうした遺跡破壊に対し、ペルー文化省もダカールラリー主催者も責任を認めていないという。「これ以上化石を破壊しないよう、主催者はルートを変更するべきだ」とHonninger氏は訴えている。

 次回ダカールラリーは2013年1月5日~20日の日程で開催される。(c)AFP/Carlos Mandujano