【12月16日 AFP】15人の児童たちは、級友たちや教員らに向けて男が銃を乱射する中、封鎖したトイレの暗がりの中で息を潜めていた。小学1年生の児童らが怯える中、担任教員は同じく恐怖を感じながらも、まるで母親のように子どもたちを守ろうとした──次に死ぬのは、自分と児童たちかもしれないと怯えつつ。

 サンディフック小学校(Sandy Hook Elementary School)の教員、ケイトリン・ロイグ(Kaitlin Roig)さんは、米ABCニュースに対し、米コネティカット(Connecticut)州で起きた銃乱射事件の恐ろしい一幕を語りながら、涙をこぼした。

 発砲音が聞こえたとき、ロイグさんは教室の児童たちを集め、急いでトイレに連れて行った。教室には見晴らしのよい大きな窓があり、その場に残るのは危険だと判断したからだ。

 ロイグさんは戸口を本棚でふさぎ、ドアを閉めて内側から施錠した。

「静かにするように子どもたちに告げました。絶対に物音を立てないように、と」

 悪夢のような静けさの中、わずか数フィート(1~2メートルほど)先の廊下で銃声が聞こえた。ロイグさんは、「悪い人たちが外にいるから、正義の味方が来るのをここで待たないといけない」と子どもたちに話しかけたという。

 子どもたちは親を求めて泣き始めたが、児童のうちの1人は、「大丈夫。僕はカラテを知ってるから安全にここから連れだしてあげる」と友達をなぐさめた。ロイグさんも泣いている子どもたちの頭を両手で包み込み、落ち着かせようとした。「きっと大丈夫よ。笑顔を見せて」と語りかけたという。

 内心、ロイグさんは最悪の事態のことを考えていた。「次は私たちだと思っていた」という。

 しかし、目の前の幼い子どもたちを見たロイグさんは、子どもたちの親を演じなければならないという結論に達した。そして、子どもたちに愛してると語りかけたという。

「あなたたちを愛している人がいるんだよ、と子どもたちに知ってほしかった。廊下の銃声ではなく、愛してるという言葉が、子どもたちが最後に聞く音になって欲しかったんです」

 ついに、銃声はやんだ。警察官がドアをノックし、外へ出ていいと声をかけた。ロイグさんがようやくドアを開けたのは、隙間から差し出された警察手帳を確認してからのことだった。(c)AFP