【12月14日 AFP】世界人口の平均寿命は1970年と比べて10年以上延びているが、人びとは延びた余生の多くをがんなどによる闘病生活に費やしているとする調査結果が、13日の英医学専門誌ランセット(The Lancet)で発表された。

 2010年の世界平均寿命は1970年と比べ、男性で11.1歳、女性で12.1歳延びた。だが、がんや心臓疾患などの非伝染性の病気にかかる人の数は過去最高に達しており、調査に協力したハーバード公衆衛生大学院(Harvard School of Public Health)のジョシュ・サロモン(Josh Salomon)氏によれば「ここ20年で平均寿命は5歳延びたが、そのうち健康に過ごせるのは4年だけ」だという。

 調査を行った研究者らは、余命延長にのみ重きを置いた保健政策を見直し、健康維持も重視した政策に転換すべきだと呼び掛けている。

■がんの死者数は約4割増、乳幼児の死者数は約6割減

 発表された調査結果は個別に行われた7調査をまとめたもの。うち最も規模が大きかったのは50か国500人近くの研究者が関わった調査で、187か国で収集された291種類の疾患や傷害のデータが含まれている。

 世界の死者数に占めるがんや糖尿病、心臓疾患などの非感染性疾患による死者の割合は、1990年の半分から、2010年には3分の2近くまで増加。2010年のがんによる死者数は800万人で、1990年(580万人)から38%増加した。

 2010年に世界で最も多くの死者を生んだ健康リスク要因は高血圧(940万人)と喫煙(630万人)、飲酒(500万人)だった。

 一方、栄養不足や感染症による死者、妊娠・出産関連の死や新生児の死者数の合計は、2010年では1320万人で、1990年の1590万人から減少した。5歳未満の死者数も70年と比べほぼ60%減の680万人だった。

 2010年の時点で世界で最も平均寿命が長かったのは日本人女性(85.9歳)とアイスランド男性(80歳)。最も短かったのはハイチ人(男性:32.5歳、女性:43.6歳)で、主な原因は2010年に25万人の犠牲者を出したハイチ地震だった。(c)AFP/Mariette le Roux