【12月13日 AFP】焼け付くような太陽の下、メキシコ中部の山間に並んだ大型の円盤型ソーラーパネル群が太陽光を集め、その熱をキッチンに照射して、トルティーヤを焼いている。

 石炭やガス、電気オーブンのことは忘れ去ってほしい。ドイツの起業家、グレゴール・シャペルス(Gregor Schapers)氏は、太陽光で1度にたくさんの料理を作れることを示すため、メキシコの小さな町エルサウス(El Sauz)でこの大型ソーラーパネルの設計と設置を行った。

 2003年にメキシコ市(Mexico City)の北180キロにあるエルサウスに移住したシャペルス氏は、環境に優しいこのソーラー調理器具で、最終的にはメキシコの貧しい地方部のエネルギー費用を節約することが可能だと意気込みを語る。

 青空の下、チェックのシャツにサングラス、大きな麦わら帽という姿でAFPの取材に応じたシャペルス氏は「1つのパネルにつき、最大60人分の食事を調理できる」と説明した。

 この調理機器に使われている太陽光技術を開発したのは、オーストリアの発明家ウォルフガング・シェフラーズ(Wolfgang Schefflers)氏。だが、調理器のパーツはすべて、シャペルス氏が設立した会社「トリニソル(Trinysol)」がメキシコ国内で製造したという。

「地方コミュニティーの社会や経済の発展に役立つ」と、シャペルス氏はこの調理器とその製造事業について宣伝する。

■1020度以上の高熱、エネルギー費用はゼロ

 ガラスとアルミニウム製のパネルは10平方メートルと16平方メートルの2サイズがあり、45度の角度で設置するものもあれば、空に向かって水平に設置するものもある。パネルが生み出す熱は1020度以上に達する。調理機器に到達した熱は、大釜とグリドル(鉄板)、オーブンで利用される。レストランやパン屋での利用が可能だ。

 製造費は割高で、サイズによっては4000~5000ドル(約33万~41万円)かかる。だが一度設置してしまえば、エネルギー料金は無料。パネル1基に付き、1か月あたり60リットルのガスを節約することができる。それにこのオーブンは環境にやさしい。使うのは再生可能エネルギーで、温室効果ガス排出量はゼロだ。

 シャペルス氏によると、同氏の製作したモデルは既存モデルと比較して大幅な改善がなされているという。「このシステムの美点は屋内で料理ができる点だ。他のソーラーオーブンは屋外で調理をしなければならない」

 まるでヒマワリのように、シャペルス氏のシステムはパネルが自動的に太陽の方を向く。これには光センサーが使われている。

 また、熱だけでなく蒸気の生成も可能で、シャペルス氏は現在、この大型パネルを使った3種類の用途(温室プロジェクト、養蜂、蒸し風呂)の研究をしている。

「始めは地域住民も、私のプロジェクトの有用性に懐疑的だった」とシャペルス氏は語る。だが、完成した製品を見て、住民も納得したという。「これらの機器を見て、パネルで実現可能なことを知り、彼らもこれが実際に役に立つことを理解してくれた」

(c)AFP/Pierre-Marc Rene