【11月26日 AFP】中国が今年発行した新パスポートの地図で南シナ海(South China Sea)のほぼ全域と台湾の観光地2か所、さらにインドとの係争地などが中国の一部として描いていることが明らかになり、各国が相次いで抗議している。フィリピンとベトナムが22日、台湾は23日に中国に抗議。インドは対抗措置を開始したという。

 問題となっているのは、生体認証用のコンピューターチップが埋め込まれた中国の新パスポート。南沙諸島(英語名:スプラトリー諸島、Spratly Islands)や西沙諸島(英語名:パラセル諸島、Paracel Islands)など南シナ海の島々が中国の一部として描かれている。日本と中国が領有権を争う沖縄県の尖閣諸島(Senkaku Islands、台湾名:釣魚台、Diaoyutai)は、この地図では中国の領土として描かれていなかった。

 フィリピンのアルバート・デルロサリオ(Albert del Rosario)外相は22日、地図は「国際法違反の法外な海域領有宣言」であり「強く抗議する」と述べ、中国政府に正式に抗議文書を送ったと発表した。フィリピンは南沙諸島の一部の領有権を主張している。

 ベトナム外務省報道官も同日、中国の新パスポートがベトナムの主権を侵害していると述べ、中国大使館に抗議したと記者団に語った。

■台湾の人気観光地、中国の一部に

 また、台湾の人気観光地、日月潭(Sun Moon Lake)と清水断崖(Cingshui Cliff)も、中国の一部としてこの地図に描かれていた。

 台湾の馬英九(Ma Ying-jeou)総統は23日、「苦労して獲得した台湾海峡(Taiwan Strait)越しの現状の安定を一方的に損う行為」を中止するよう中国に要求する抗議声明を発表した。

 台湾の大陸委員会は「(台湾は)独立主権国家である。双方が別々に統治されてきたことを中国は認識し、論争的な問題に直面した際には自制するべきだ」と批判した。

■インドと中国の係争地も

 地図には中国とインドの係争地、アルナチャルプラデシュ(Arunachal Pradesh)州とアクサイチン(Aksai Chin)も中国の一部として描かれていた。

 これに対してインド政府は、訪印中国人の査証に係争地をインドに含めた地図を押印する措置を開始したという。匿名を条件に取材に応じたインド外務省高官は24日、「われわれが認識するインドの地図が描かれた査証の発行を始めた」と語った。

 中国政府はこの問題が外交に影響を及ぼさないよう沈静化を狙っている。中国の外務省報道官は「(地図は)特定の国を標的にしたものではない」と述べ、「関係国と活発な会話を維持し、人的交流の健全な発展を促したい」と語った。(c)AFP