【11月5日 AFP】ミャンマー西部で仏教徒とイスラム教徒が衝突している問題をめぐり、アウン・サン・スー・チー(Aung San Suu Kyi)氏は3日、自分の「道徳的指導力」を行使していずれかの側を支持することはしないと語った。

 ミャンマー西部のラカイン(Rakhine)州で発生した衝突について、ノーベル平和賞受賞者でミャンマーの最大野党、国民民主連盟(NLD)党首のスー・チー氏はこれまで発言を避けており、このことがスー・チー氏の国際的な支持者らを失望させるとともに、当事者双方からは自分たちの味方に付かなかったと「不満」の声も出ている。

 ラカイン州の衝突では、6月以降10万人以上の住民が避難を余儀なくされている。先月も衝突があり、新たに約3万人の住民が避難した。また、これまでに双方でそれぞれ数十人が死亡し、数千戸の住宅が放火されている。

 スー・チー氏は3日、欧州連合(EU)欧州委員会のジョゼ・マヌエル・バローゾ(Jose Manuel Barroso)委員長と首都ネピドー(Naypyidaw)で会談後、BBC(英国放送協会)に出演。バローゾ委員長は衝突による暴力と衝突がミャンマーの改革にもたらす帰結に対して、EUは「深く懸念」していると表明していた。

 スー・チー氏は「私は寛容を呼びかけている。だが、問題の原因を見ずしてモラルリーダーシップ(道徳的指導力)なるもの─あなたたちが仮にそのように呼ぶとして─を発揮するべきではないと考えている」と述べ、国を持たないロヒンギャ人を擁護する発言はできないと語った。

 ミャンマーに暮らすロヒンギャ人80万人は、政府をはじめ国内の多くから、近隣バングラデシュからの不法移民とみなされている。活動家らは、激しい差別により、ロヒンギャ人らはいっそう疎外されることとなっていると主張。国連(UN)も、ロヒンギャ人を世界で最も迫害されている民族の1つと位置づけている。(c)AFP