【10月15日 AFP】カンボジアのノロドム・シアヌーク(Norodom Sihanouk)前国王が15日午前2時、滞在先の北京(Beijing)で病気のため死去した。89歳だった。中国国営の新華社(Xinhua)通信が報じた。

 今月31日に90歳の誕生日を迎えるはずだったシアヌーク前国王は近年、がんや糖尿病、高血圧、心臓病など幾つかの病気の治療のためしばしば中国を訪れ、今回も1月から北京に滞在していた。

 カンボジアのニャク・ブンチャイ(Nhek Bunchhay)副首相は新華社に対し、ノロドム・シハモニ(Norodom Sihamoni)国王とフン・セン(Hun Sen)首相が15日、前国王の遺体を引き取るため北京に飛び、葬儀はカンボジア国内で伝統に沿って行われる予定だと述べた。

■国民の人気を集めた波乱に満ちた生涯
 
 シアヌーク前国王は、カンボジアの歴史のように波乱に満ちた生涯を送った。1941年に18歳で即位し、12年後の1953年にフランスからの完全独立を達成した。それから間もなく父のノロドム・スラマリット(Norodom Suramarit)殿下に王位を譲って政界に入り、首相に就任した。ささいに思えることに怒って辞任を繰り返し、1960年のスラマリット国王死去後に「国家元首」に就任するまで首相を6度務めた。

 1970年に親米派のロン・ノル(Lon Nol)将軍がクーデターを起こすとシアヌーク前国王は北京に亡命した。後にクメール・ルージュ(Khmer Rouge)となる共産ゲリラと協調したが、ポル・ポト(Pol Pot)政権下の1975~79年は家族と共に王宮に幽閉された。内戦終結に尽力し、1993年に王位に復帰した。

 アジアで最も在位期間が長い君主の1人だったシアヌーク前国王は2004年10月、高齢と健康問題を理由に退位したが、今でも公共施設や多くの家庭に肖像画が飾られるなど国民の間での人気は高い。(c)AFP