【10月10日 AFP】パキスタンで9日、タリバンがスクールバスの中にいる14歳の少女の頭を銃で射ち重傷を負わせた。少女は、子どもの権利を守る活動で有名なマララ・ユスフザイ(Malala Yousafzai)さんで、銃撃はこの活動に対する報復とみられるが、パキスタン国内に強い衝撃と少女を銃撃したタリバンへの憎悪が広がっている。

 マララさんは同国北西部のペシャワル(Peshawar)に空路搬送され、集中治療室で懸命の手当てを受けている。警察当局によると、事件では他にもスクールバスに乗っていた少女2人が負傷した。

 軍病院で診断を行った医師団は9日夜、マララさんは重体だと発表。ある医師はAFPの取材に「彼女は重体だ。弾丸は頭部を貫通し、肩の背中側、首のそばにとどまっている」と語った。この医師は「彼女は現在集中治療室で治療を受けており、意識はかすかにある程度だが人工呼吸器は取り付けられていない」と続け、今後3~4日間が峠だと語った。

 イスラム武装勢力「パキスタンのタリバン運動(Tehreek-e-Taliban PakistanTTP)」が犯行声明を出し、今回の事件はマララさんが同国スワト(Swat)地方で教育権を求める運動を行っていたことに対する報復であり、自分たちに反対する発言をする者は同様の運命をたどるだろうと述べた。

 2007年から2009年までスワト地方の大半を支配していたタリバンは、2009年7月の政府軍の掃討作戦で、一掃されたとみられていた。

■パキスタンの少女たちを勇気付けたマララさん

 3年前、イスラム教の強硬派聖職者マウラナ・ファズルラ(Maulana Fazlullah)師率いるイスラム教過激派がマララさんの通う学校を燃やし、スワト渓谷を恐怖に陥れた。当時11歳だったマララさんは、英国放送協会(BBC)ウルドゥー語(パキスタンの国語)放送のブログに匿名でタリバンの残虐行為を書き込んで国際的な注目を集めた。

 2011年、マララさんはBBCのリポートの中で自分の日記の抜粋を読み上げ、タリバン支配下の恐怖を伝えた。

「タリバンが昨日、女の子は学校に行くのをやめるべきだと発表したのでとても怖かった。今日は校長先生が全校集会で、明日から制服を着てこなくてもいい、女の子は私服で学校に来るようにと言った。今日学校に来た女の子は27人のうち11人しかいなかった」

 マララさんの行動はパキスタン北西部でイスラム過激派によって教育機会を奪われていた数万人の少女たちの共感を呼んだ。昨年マララさんはパキスタン政府から第1回の国家平和賞を授与されたほか、子どもの権利擁護団体「キッズライツ財団(KidsRights Foundation)」から国際子ども平和賞(International Children's Peace Prize)の受賞候補者にも選ばれた。(c)AFP/S.H. Khan