【9月28日 AFP】(写真追加)イタリア・ルネサンス期の芸術家レオナルド・ダビンチ(Leonardo da Vinci)が描いた世界で最も有名な絵画「モナリザ(Mona Lisa)」──その若かりし姿を描いたとされる肖像画「アイルワースのモナリザ(Isleworth Mona Lisa)」について、スイス・チューリヒ(Zurich)のモナリザ財団(Mona Lisa Foundation)は27日、ダビンチの作品であるとの鑑定結果を発表した。

「アイルワースのモナリザ」は長らく個人コレクターのヘンリー・ピュリツァー(Henry Pulitzer)氏が所有していたが、同氏の死後40年以上、スイスの銀行の金庫に保管されていた。後の2008年に匿名の国際財団が、ピュリツァー氏の伴侶だった女性の遺産から購入し、モナリザ財団に鑑定を依頼していた。

「アイルワースのモナリザ」と「モナリザ」の顔は驚くほど似ているが、「アイルワース」のほうはモデルの年齢が明らかに若い。また背景の風景は下絵のままで、両脇には柱が描かれている。モナリザ財団によれば、こうした特徴は「未完のモナリザ」として歴史上登場する記述によく似ている上、ダビンチと同じイタリアの巨匠ラファエロ(Raphael)など他の画家が当時描いた「モナリザ」の模写やスケッチの特徴と一致しているという。

 モナリザ財団がジュネーブ(Geneva)で開いた記者会見は、報道陣やテレビカメラでいっぱいになった。鑑定結果を証言するために、同財団によって会場に集められた専門家たちは、「アイルワースのモナリザ」はダビンチが「モナリザ」の10年ほど前に描いた未完の作品だと述べた。
 
  所有者の匿名財団を代表して出席した美術商のデビッド・フェルドマン(David Feldman)氏は推定価格を明かさず、個人に売却するよりも一般公開できる状態のほうがふさわしいとの見解を述べた。

■「謎めいた」表情に欠ける?との疑問も

 一方、会見に出席しなかった専門家からは、「アイルワースのモナリザ」がダビンチの作品だとする鑑定結果に疑問を投げ掛ける声も出ている。

 その1人、英オックスフォード大学(University of Oxford)の美術史家マーティン・ケンプ(Martin Kemp)氏は、女性の髪やベール、ドレスの透けた重なり、手の骨格など「モナリザ」が持つ細部の緻密な描写が「アイルワースのモナリザ」からは感じられないと指摘。また多くの模写作品同様、ダビンチの「モナリザ」の「謎めいた」表情を捉えていないと述べている。

 こうした批判に対し、モナリザ財団側は作品を実際に間近で見てほしいと語っている。同財団は、「アイルワースのモナリザ」の鑑定結果を『Mona Lisa -- Leonardo's Earlier Version(ダビンチが描いた若きモナリザの肖像)』と題した320ページの書籍にまとめ発表している。(c)AFP/Nina Larson