【9月13日 AFP】デービッド・キャメロン(David Cameron)英首相は12日、1989年に起きた「ヒルズボロの悲劇(Hillsborough Disaster)」で、警察当局が犠牲となった96人に事故の責任を押しつけようとしたことが明らかになったとし、遺族に謝罪した。

 議会でキャメロン首相は、犠牲者は誘導の不備により英国スポーツ史上最悪の事故に遭っただけでなく、警察当局からも非難され、「二重の不義」に苦しめられたと語った。

 「政府を代表して、またこの国を代表して、二重の不義が長らく訂正されずにいたことを、心からお詫びする」

 この発言に先立ち、リバプール(Liverpool)司教を筆頭とした7人のメンバーからなるヒルズボロ独立委員会(Hillsborough Independent Panel)により、これまで未公開だった無数の文書への徹底的な再調査が行われ、報告書が発表された。

 キャメロン首相が、事故がファンの過失によるものだとみせかけるために、当局が事故後の不手際を示す証拠の隠蔽を複数回試みていたとする同委員会の調査報告について言及すると、議会は静まり返った。

 同委員会はまた、検視報告書を分析した結果、犠牲者のうち41人はより迅速な救急処置を施していれば蘇生の可能性があったことを明らかにしている。

 一方、リバプール大聖堂(Liverpool Cathedral)の外では、試合が中止となった時間と同時刻の3時6分から犠牲者への哀悼の意を表して2分間の黙祷が捧げられ、その後、ろうそくを灯しての徹夜の祈りが捧げられた。

 「ヒルズボロ遺族支援グループ(Hillsborough Families Support Group)」のメンバーで、この事故で2人の娘を失ったトレバー・ヒックス(Trevor Hicks)さんは、今後関係者に対する訴訟を起こすつもりだとしながら、「今日、真実が明るみに出た。明日からは正義が下される」とコメントした。

 事故は、英シェフィールド(Sheffield)のヒルズボロ・スタジアム(Hillsborough stadium)で行われた1989年のFAカップ(FA Cup)準決勝、リバプール(Liverpool FC)とノッティンガム・フォレスト(Nottingham Forest)の一戦で、リバプール側のゴール裏にあたるレッピングス・レーン・エンド(Leppings Lane End)が超満員となったことで起こった。

 スタジアム外の混雑を緩和しようと警察が出口用の門を開放したところ、サポーターがゴール裏の中央部の囲いになだれ込んだため、フェンスに囲まれたサポーターが押しつぶされて犠牲となった。

 スタジアムは最低限の安全基準しか満たしていなかった。回転式ゲートは不十分で、収容可能人数を大幅に多く見積もり、さらにピッチへの進入を防ぐ柵も安全基準に達していなかった。(c)AFP/ Robin Millard