【9月7日 AFP】仏南部オートサボア(Haute-Savoie)県シュバリーヌ(Chevaline)で5日、駐車場に止まっていた自動車とその近くで男女4人の射殺体が見つかり少女2人が保護された事件で、捜査関係者らは犯行は極めて残虐で、暗殺のプロの特徴が数多くみられると話している。

 5日午後3時48分(日本時間同日午後10時48分)ごろ、近くに別荘を持つ英空軍を退役した英国人男性が自転車で駐車場に入ったところ遺体を見つけた。車両は英国で登録されたBMWで、車のエンジンはかかったままだった。

 少女がよろめきながら車から出てきて男性の方に歩み寄って倒れたため、男性は当局に通報し、救急隊の到着まで少女に応急措置を施した。この対応が少女の命を救ったとして、当局は通報した男性を称賛している。

 この7歳の少女は、肩を撃たれ、頭蓋骨も骨折していたため、グルノーブル(Grenoble)の病院に搬送された。手術を受けるため現在は麻酔による昏睡(こんすい)状態にあるが、命に別条はないという。

 車の前部座席に男性1人、後部座席に女性2人の遺体があった。仏警察は運転していたのはイラク出身でイングランド(England)南東部サリー(Surrey)州在住のサード・ヒリ(Saad al-Hilli)さん(50)だったと発表した。

 また仏当局は、車の近くで死亡しているのが見つかった男性は近くに住むシルバン・モリエ(Sylvain Mollier)さんだと発表した。サイクリング中に事件に巻き込まれたとみられている。

■犠牲者全員が頭部に銃弾

 地元アヌシー(Annecy)のエリック・マイヨー(Eric Maillaud)検察官は6日夜、仏民放テレビTF1で、犠牲者はみな複数の銃弾を受け、1発以上が頭部に命中していたと述べた。

 犯行に使われたのは自動拳銃で、現場から使用済みの薬きょう15個が見つかっている。車のボディに弾痕はなく、犯人は窓から銃弾を撃ち込んでいるため、無差別に発砲したのではなく明確な殺意があったとみられている。現場で武器は見つかっていない。

 一方、犠牲者の娘とみられる警察に保護された少女2人のうち、4歳の妹は後部座席で死亡した母親のスカートの中に身を潜めていた。鑑識班の到着まで車に触れないよう命じられていたこともあり、警察は最初に現場を検証した際この少女の存在に気付かず、少女は8時間も車内に取り残されていたという。メロー検察官は、この少女は母親のスカートに完全に隠れていたため、その姿は全く見えなかったと語った。

 メロー検察官によると、4歳の少女は警察に保護されて明らかにほっとしており、すぐに母親のことを尋ねた。少女は、大きな音や叫び声がしてとても怖かったということだけを話しているという。地元の病院の児童心理専門家らがこの少女に対応している。

 このほか、4人が射殺されたとみられる時刻に、駐車場から猛スピードで走り去る車を見たという数件の目撃情報もある。

 7日に犠牲者4人の検視が行われる予定だが、謎の多い事件の手がかりを求める仏警察は英国から4人のDNAの到着を待っている。

 アルプスを臨むオートサボアは風光明媚な避暑地として知られ、英国人をはじめとして多くの観光客が訪れる。(c)AFP/Michael Mainville