【8月28日 AFP】米グーグル(Google)は22日、カナダの北極圏から同社の無料オンライン地図情報サービス「ストリートビュー(Street View)」で映像配信するプロジェクトを開始した。同プロジェクトには、同地のツンドラ(永久凍土)地帯に住む先住民族イヌイット(Inuit)も協力している。ストリートビューで、ユーザーをカナダ北極圏への旅へといざなう計画だ。

 このプロジェクトの舞台は、北西航路(Northwest Passage)のルートとなっているカナダ北極海諸島(Arctic Archipelago)の1島、ビクトリア島(Victoria Island )にある小さな町、ケンブリッジベイ(Cambridge Bay)だ。同国のスティーブン・ハーパー(Stephen Harper)首相と夫人もプロジェクトの視察に訪れた。

 人口約1600人のケンブリッジベイは、カナダ最北端のヌナブット(Nunavut)準州に位置し、今までストリートビューが進出した中でも最も辺境にある地の1つだ。

 同プロジェクトの目的について、グーグルのプロジェクトメンバーは「美しいカナダ北極圏の風景と、そこに住むイヌイット民族の文化を、世界のインターネットユーザーと共有すること」と説明する。

■町の暮らしを世界に見せることが誇りに

 前年にヌナブット住民の土地使用権を管理する先住民企業「ヌナブット・トゥンガビク・インク(Nunavut Tunngavik Inc.NTI)」のコーディネーター、クリストファー・カルーク(Christopher Kalluk)氏が、グーグルに話を持ちかけたことによって始まったこのプロジェクト。グーグルはこれまで、ヌナブット準州の政治家やケンブリッジベイの長老らと協力して11か月にわたる準備を進めてきた。

 長老の1人、アンナ・ナホガロアク(Anna Nahogaloak)さんはキティクメオト遺産保護協会(Kitikmeot Heritage Society)とのインタビューで、「私たちがどんな暮らしをしているのかや生活の術などを、いつも尋ねられる。みなイヌイットのあらゆることを知りたがっているんです。ストリートビューは、ヌナブットでの生活について理解を深める助けになるでしょう」と話している。

 プロジェクトではまず、ケンブリッジベイの地図を強化する「マップアップ(Mapup)」イベントが行われ、10人ほどの住民がグーグルのノートPC「クロームブック(Chromebook)」を用いて道路や河川、カーリング場、石造りの教会など地元の地図情報を追加していった。

 プロジェクトのリーダー、カリン・タクセンベットマン(Karin Tuxen-Bettman)氏によれば、グーグルはこのプロジェクトにクロームブック10台を寄付したほか、360度撮影が可能な特殊カメラも「無期限で」NTIに貸与する予定だという。

「ストリートビューを通じて、ヌナブットのコミュニティーを世界中の人々に見てもらえる。そのことが、自分たちが暮らす場所に誇りと情熱を持つことにつながる」(タクセンベットマン氏)

 前週には、カメラと衛星測位装置を搭載した三輪車が、町内や付近のツンドラ地帯を走行しストリートビューの撮影を行った。この三輪車はケンブリッジベイで撮影を終えたあとは、同州の他の集落でグーグルが来年に予定しているストリートビュー撮影にも用いられるという。(c)AFP/Glenn Chapman