【7月24日 AFP】5、6歳の少女が米コロラド(Colorado)州オーロラ(Aurora)の銃販売店で、ライフルを構える――この町で20日に起きたばかりの銃乱射事件が、まるでなかったことのようだ。

「ハニー、それはあなたには大きすぎるわ。別のを見つけてあげるからね」と、母親は少女に語り掛ける。

 これは米国のハートランドと呼ばれる中西部の日常だ。ここの人々に合衆国憲法修正第2条に記された銃武装の権利を断念させるには、数回の銃乱射事件以上の理由が必要だ。

 銃擁護派たちが繰り返す主張の1つには、市民が武装していれば、大勢が犠牲になる前に、ジェームズ・ホームズ(James Holmes)容疑者のような殺人犯を射殺することができる、というものがある。

「そこに俺がいたならば、俺が殺していたね」「人を殺すのは銃じゃない、人だ」というのが擁護派の決まり文句だ。

■銃規制の是非を問われる米国

 ラグビーコーチのジョン・オバリーさん(51)は、オーロラの映画館での銃乱射事件について、問題を生み出したのは銃武装の権利ではないと語る。

「現場に俺がいたら、被害をいくらかは阻止できた」とオバリーさんはAFPの取材に語る。「実際、あそこにいた誰か1人でも銃を持っていれば、被害をいくらかは阻止できたのに」

 今年11月の米大統領選で共和党候補としてバラク・オバマ(Barack Obama)大統領に挑戦することになるミット・ロムニー(Mitt Romney)前マサチューセッツ州知事は23日、今は新たな銃規制を法制化する時期ではないと強調し、憲法修正第2条を強く支持する考えを表明した。

「感情が高まっている今は、オーロラでの出来事に関連する政治問題を話し合う時期ではない」と、ロムニー氏は述べた。

 ホームズ容疑者が合法的に4丁の銃を調達したことが明らかになり、事件後、銃規制法の見直しを求める声は高まっている。

 ホームズ容疑者は8週間かけ、軍仕様の小口径自動小銃AR-15用の.233弾3000発、グロック社製拳銃用の銃弾3000発、ポンプアクション式散弾銃用に300発、計6300発をインターネットで購入。さらにAR-15用に毎分50~60発を発砲可能な特製弾倉を調達した。

 だが、ロムニー氏は、銃規制は十分に厳しく、問題はないと述べる。

「今もなお、保守のためには憲法修正第2条が正しい道だと信じている。新法制定でこの種の悲劇に変化が生まれるとは信じてない」「われわれの課題は、法ではなく、現実から目をそらし、思いもよらない想像不可能な説明しがたい行為をする人間だ」(ミット・ロムニー氏)

■大統領選を前に銃規制を強化できないオバマ大統領

 オバリーさんはオーロラにいくつかある銃販売店の1つで、銃弾の並ぶ棚をじっくりと眺めながらこう語った。「犯罪者じゃなければ(銃を買うのは)比較的簡単さ。簡単な書類作業だけ。それですぐに照会する。あとは銃を持って店を出てもいいし、自宅に配送してもらってもいい」

 AFP記者が実際に銃を購入しようと試みたところ、必要だったのは運転免許証のみだった。販売員は犯罪履歴を照会し、履歴がなければほんの1分で購入まで終わる。

 ホームズ容疑者が武器をそろえることができたのはこのためだ。同容疑者には、自動車のスピード違反以外に犯罪歴がなかった。

 銃規制を求めて運動をする人びとは、民主党のオバマ大統領に失望している。だが政治的現実主義者たちは、激論を巻き起こす銃問題を今取り上げることは、オバマ氏にとって「選挙的自殺行為」になりかねないと指摘する。

 11月の大統領選で激戦が予想されるオハイオ(Ohio)州、ペンシルベニア(Pennsylvania)州、バージニア(Virginia)州などには、銃武装の権利を強く訴える有権者層がある。(c)AFP/Leila Macor