【7月18日 AFP】英金融大手HSBCの幹部らは17日、米議会上院の小委員会公聴会で、マネーロンダリング(資金洗浄)を防ぐための十分な措置を取っていなかったとして謝罪した。国土安全保障・政府活動委員会(Homeland Security & Governmental Affairs)の調査小委員会が開いた公聴会では、HSBCがイラン当局やテロリスト、麻薬密売業者らに米金融システムを通じた多額の不正送金を長年にわたって許したとして、厳しい批判の声が相次いだ。

 英銀行業界は既に、ロンドン銀行間取引金利(LIBOR)の不正操作をめぐって批判の渦中にある。こうしたなか公聴会に出席したHSBC米法人HBUSHSBC Bank USA)のアイリーン・ドーナー(Irene Dorner)社長兼最高経営責任者(CEO)は、「規制当局や顧客、従業員、社会の期待にHSBCが沿えなかったことは非常に遺憾だ」と述べ、謝罪した。

 また、HSBCコンプライアンス(法令順守)部門トップのデービッド・バグリー(David Bagley)氏は「大きな問題がある分野があった」と述べるとともに、辞意を表明した。

■不正取引で麻薬組織などに利益

 上院は330ページに及ぶ報告書の中で、メキシコ、サウジアラビア、バングラデシュなどのHSBC現地法人から、不正が疑われる巨額の資金が適切な規制を受けないまま米国に送金されていたと指摘している。

 議員らは公聴会で、こうした取引によってメキシコの麻薬組織やテロリスト・ネットワークが不正に利益を得ていたほか、米政府の対イラン制裁を回避する手段にも使われていたと批判。十分なマネーロンダリング防止策を取らなかったとして、HSBC幹部や米財務省当局の責任を厳しく追及した。

 調査小委員会のカール・レビン(Carl Levin)委員長(民主党)は「かなりショッキングな問題だ」と述べた。

■イランとの取引を隠す

 HSBCとHBUSについては、6年間で総額160億ドル(約1兆3000億円)を超えるイランへの送金を隠し、米当局の規制に違反していたことが明らかになっている。数千件に上る取引の書類からはイランとの関わりを示す情報が全て取り除かれていた。HSBC幹部は2001年にはイランへの送金隠しの事実を把握していたが、送金は07年まで続いていた。

 イラン以外の外国銀行を窓口として米国内にいったん入れた資金を米国外に出す循環取引で、HSBCは2万5000件の米ドルの取引をイランと行っていたとされる。米上院報告書によれば、その「75~90%は、HBUSその他の米ドル口座を介し、イランとの関連を隠した状態で行われていた」という。

 米国はイランや北朝鮮など、米政府が敵国とみなした国との金融取引を禁じており、米財務省の外国資産管理局(Office of Foreign Assets ControlOFAC)が厳しく監視している。(c)AFP/Michael Mathes