【7月16日 AFP】皇居に臨む保険会社のビルの一室から、ダグラス・マッカーサー(Douglas MacArthur)米陸軍元帥は連合国軍総司令部(GHQ)の最高司令官として、6年間にわたり占領下の東京を見下ろしていた。当時のままの姿で保存されているというその執務室が、日本の主権回復から60年以上を経て今週、初めて一般公開される。

 第一生命保険(Dai-Ichi Life Insurance Company)が17日から1週間の期間限定で公開する執務室は、本社ビルの6階にある。終戦当時、社長室として使われていたものをGHQが接収した。執務室時代に使用されていた椅子や机、さらにはマッカーサー元帥自身が座っていた肘掛け椅子までもが今なお保存されている。

 マッカーサー元帥はこの執務室から、日本が第2次世界大戦後の焼け野原から復興していくのを眺めた。昭和天皇の神格性を否定し「日本国の象徴」として位置づけた新憲法の起草を命じたのも、この執務室からだった。

 やがて米国の関心が朝鮮半島へと移り、建物が第一生命へと返還された後も、同社はマッカーサー元帥が立ち退いた当時そのままの姿で執務室を保存してきた。

 返還から60年を機に一般公開を決めた同社だが、現代日本人の中にはこの執務室が戦後史において果たした役割の大きさを理解しない人も少なくないだろうことも把握している。AFP記者に執務室を案内してくれた若い社員も、入社するまで本社ビルがGHQに使用されていた事実を知らなかったと打ち明けた。

 執務室の壁や床は全て木製で、大きな窓からはカーテンを透かして日差しが差し込む。引き出しのない机は、書類をためることを嫌ったマッカーサー元帥のたゆまぬ仕事ぶりの面影を今に伝えている。(c)AFP/Karyn Poupee