【6月1日 AFP】今月5~6日、金星が地球と太陽の間を通過する「日面通過」を世界各地で観測することができる。次回は105年後という非常に珍しい天文現象だ。

 燃え盛る太陽面を小さな黒点と化した金星が約6時間半かけて横切る様子は、望遠鏡で観測可能。当日の天候にもよるが、北中米~南米北部では5日午後遅くから日没にかけて日面通過が始まる。

 東アジアと西太平洋地域では、通過の全過程を見られる。欧州、中東、南アジアでは6日夜明けごろに通過の終盤を目撃できる。

■100年以上の間を置き2回ずつ、不思議な発生メカニズム

 過去に観測記録が残っている金星の日面通過は6回のみ。17世紀にドイツ人数学者ヨハネス・ケプラー(Johannes Kepler)がこの天文現象を予測するまで、いつ、どこを見たら観測できるのか誰も知らず、また観測に必要なレンズも発明されていなかった。

 実に不思議なことに、金星の日面通過は必ず6月か12月のいずれかに起きる。一度起きると続けて8年後の同じ月にまた発生するが、その次の日面通過までは気が遠くなるほどの長い年月を待たなければならない。

 6月の日面通過が2回続いた後、105年後に12月の日面通過が2回続く。そこから121年6か月後にまた、6月の日面通過が起きる。

 前回の日面通過は2004年6月に観測された。その前は1882年12月。つまり、今回の6月の日面通過を見逃してしまうと、次に観測できるチャンスは2117年12月と2125年12月まで来ない。

■金星大気や系外惑星の発見にも期待

 天文学者らは日面通過の観測を通じ、厚い雲で覆われた金星の大気をめぐる新たな発見ができるのではないかと期待している。また、太陽光の大気差(屈折現象)の測定を通じて、遠い星を周回する惑星の発見技術を向上することも目指している。

 中でも最も成果が高いと期待される試みの1つに、宇宙望遠鏡や金星探査機ビーナスエクスプレス(Venus Express)などの探査機からの観測結果と、地上の望遠鏡による観測結果とを比較する計画がある。仏パリ天文台(Paris Observatory)宇宙物理研究部門(LESIA)のトマ・ウィドマン(Thomas Widemann)氏は、「異なる角度からの測定結果を使えば、太陽系外惑星の分析方法を調整できる」と説明している。(c)AFP/Laurent Banguet and Richard Ingham

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