【5月21日 AFP】(一部更新)太平洋を挟んだアジアと米国西部で21日(日本時間)、太陽と地球の間を月が通過して太陽の一部が月で隠れ指輪のように見える金環日食が観測され、多くの人々が空を見上げた。

 金環日食は、まず21日早朝に中国で観測された後、日本各地で見られ、太平洋を横断。北米西岸では現地時間の20日夕暮れどきに観測された。

 中国東部の広い範囲で空は雲に覆われ、香港(Hong Kong)で早起きをした人々はかろうじて金環日食を見ることができたが、それ以外の場所では人々を落胆させた。

 一方、東京では観測用メガネを手にした多くの人々が、都内では173年ぶりとなる金環日食を楽しんだ。都内各地で、通勤中の人々や通学中の子どもたちが路上で金環日食を見上げて喜ぶ姿が見られた。

 金環日食を見るための1泊ツアーに妻とともに参加したという秋田県の60歳の男性は、六本木にある54階建てのビルの最上階から金環日食を観測。完璧な環を確認し、歓声をあげていた。最上階のテラスには200人あまりが集まり、観測用メガネを通して金環日食を見ていた2歳の男の子も、「見えた、見えた!」と喜んで走り回っていた。

■各地でイベント

 電機大手パナソニック(Panasonic)は、世界でも最も美しい金環日食を日本最高峰から、太陽光で発電したエネルギーだけを使って中継するとの触れ込みで、大容量の充電池を持参したパナソニックの登頂チームが、富士山(Mount Fuji)の山頂(標高3776メートル)から金環日食を生中継するという試みを行った。

 香港では、早起きをした数千人がビクトリアハーバー(Victoria Harbour)に集まったが、雲にさえぎられ金環日食の観測はかなわず、観測用メガネを手に互いの写真を撮り合っていた。一方、高い場所にいた人々は雲の合間から金環日食を見ることができた。

 一方、米西部では現地時間の20日夕方、金環日食を一目見ようと数千人が晴れ渡った空を見上げた。北米で最も完璧な環が見られるとされたユタ(Utah)州の人口約350人の町カナラビル(Kanarraville)は、金環日食を見ようと訪れた数千人で埋め尽くされた。

 カナダ王立天文学会(Royal Astronomical Society of Canada)の会員だというデービッド・リー(David Lee)さんは、「金環日食の進路を分析したが、米西岸は霧がかかりがちでニューメキシコ(New Mexico)は標高が高すぎる。金環日食を見る賭けに出るならユタ州がベストだろう」と、地元紙ソルトレーク・トリビューン(Salt Lake Tribune)に語った。

 さらに西のロサンゼルス(Los Angeles)では、小高い丘にあり市内やハリウッド(Hollywood)の看板を見渡せるグリフィス天文台(Griffith Observatory)で開かれた日食観測イベントに数千人が集まった。日没の2時間前、雲ひとつないカリフォルニア南部の空に、直径の86%が月に覆われた太陽が観測できると予報されていた。

 同天文台は、ロサンゼルスでは約20年ぶりとなる一大天文ショーを前に観測用グラスを2.99ドル(約240円)で販売したが2日前に完売したため、観測用グラスを持たない人々には1家族につき2個限定で特殊フィルムを販売した。(c)AFP/Harumi Ozawa

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