【4月26日 AFP】2010年に英情報局秘密情報部(Secret Intelligence ServiceSIS)、通称「MI6」職員の裸の変死体が、ロンドン(London)の自宅にあった旅行カバンから見つかった未解決の事件で、このカバンから何者かのDNAの痕跡が発見されたことが明らかになった。

 捜査を指揮するジャッキー・セバイア(Jackie Sebire)警部は24日、裁判所で「ロンドンにある被害者宅の浴室で見つかった旅行カバンのファスナーの持ち手部分と南京錠から、微量ながら被害者のものではない別人のDNAが確認された」と述べた。DNAから特定の人物を割り出せる範囲は限定されているが、鑑定は継続するという。

 MI6職員ガレス・ウィリアムズ(Gareth Williams)さん(当時31)の変死事件について捜査チームは、当初から第3者の関与を想定して捜査を行ってきた。しかしウィリアムズさんの死亡時に他の人間がいたことを示す証拠はこれまで見つかっていなかった。

■穏やかな表情が語りかけるもの

 ロンドン警視庁(Metropolitan PoliceScotland Yard)は死因を究明できておらず、ウィリアムズさんが性的な遊戯として自分でカバンの中に入ったという推理について検証するため、被害者みずからカバンに入った場合を想定した再現ビデオを法廷で流す予定になっている。

 裁判所で示された図解によれば、ウィリアムズさんの遺体はカバンの中で胎児のように身を丸めた状態で発見された。カバンは外側から南京錠がかけられていたが、鍵はカバンの中で遺体の下から見つかっており、内側から開錠できた可能性もある。

 セバイア警部は、「遺体の顔は非常に穏やかで両手とも胸に置かれていた」と述べ、遺体が入っていた赤いノースフェイス(North Face)社製のカバンには、誰かが争ってできたような傷はなかったことにも触れた。「(ウィリアムズさんは)非常に筋肉質で、日常的にトレーニングも行っていた。私見だが、(争えば)少なくともネットに裂け目ぐらいはできるのではないか」と述べた。

 その他の法医学的証拠には、建物の共有部分で見つかった何者かの血痕と、フラット内で見つかったウィリアムズさん自身の血痕もあるが、それらはウィリアムズさんが行方不明となった頃か、それよりも古い可能性があるとセバイア警部は述べた。

 ウィリアムズさんの遺族の弁護士、アンソニー・オトゥール(Anthony O'Toole)氏は前月、ウィリアムズさんの死亡時に何者かが現場にいたか、あるいは死後に室内に押し入ったと遺族が考えていることを明らかにしている。同弁護士の説明によると、遺族は「情報活動の闇の部分を担う何らかの組織に所属する正体不明の第三者が存在していた、もしくはそうした闇の活動のプロによって死後、証拠が抹消された」という印象を持っているという。

 ウィリアムズさんは優秀な暗号解読の専門家で、電子通信を監視する英政府通信本部(GCHQ)からMI6に派遣されていた。(c)AFP/Judith Evans

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