【4月6日 AFP】中国沖の小島で前年12月に出土した約8000年前の人骨が、太平洋地域一帯に広がっていったとされる先史の人々について知る貴重な手がかりになるのではないかと期待されている。

 人骨が発見されたのは中国福建(Fujian)省の沖合30キロにある台湾の離島、亮島(Liang Island)。道路建設ために土木作業を行っていた台湾軍が偶然、埋葬地を発見した。ほとんど骨格のみとなっていた遺骸は、約8000年前の男性で年齢は35歳前後とみられ、現在台湾人口の約2%を占める先住民の遠い祖先に当たると考えられている。

 この人骨の発掘と検証作業を率いた台湾中央研究院(Academia Sinica)の陳仲玉(Chen Chung-yu)研究員によると、「埋葬方法から判断して、われわれが現在『オーストロネシア語族』と呼んでいる語族に属する可能性が高い」という。

 台湾先住民は、先史時代に太平洋を横断し、現在のチリ沖にあるイースター島(Easter Island)にまで広がったこのオーストロネシア語族に属している。

 遺骸を丹念に調査した陳氏は、その埋葬方法に驚いたという。胎児のように体を丸めた姿勢で埋葬する点で、台湾先住民が20世紀後半まで行っていたのと同じだったからだ。

 今後はDNA検査を通じて遺伝子的な背景を探る予定だ。台湾先住民や太平洋の島々に住む人々の祖先の多くは、現在の中国南部にルーツがあると考えられており、このつながりが確認されれば、太平洋へ大きな1歩を踏み出す前のオーストロネシア語族の祖先の暮らしを理解する手がかりとなりそうだ。

 陳氏は「オーストロネシア語族は海の近くに住み、非常によく移動していた。ある程度の造船技術も発達させ、既に陸から遠くへ船出することも可能だった」と説明し、中国浙江(Zhejiang)省で発見されたカヌーを証拠として挙げた。

 また陳氏は、遺骸の発見された亮島は食料となる野菜を確保するには小さすぎるために定住者はなく、遺骸の主はそうした航海の間に死亡したのだろうと推測している。(c)AFP/Benjamin Yeh