【4月2日 AFP】先月22日にクーデターが起きた西アフリカ・マリのトゥアレグ(Tuareg)人反政府勢力「アザワド解放民族運動(National Movement for the Liberation of AzawadMNLA)」は1日、同国北部の伝説的な砂漠都市トンブクトゥ(Timbuktu)を掌握したと発表した。

 イスラム系武装勢力の支援を受けて独立国家設立闘争を続けるトゥアレグ(Tuareg)人との戦いの中で、政府の対応に不満を募らせた兵士たちが今回のクーデターを起こした。クーデター後にトゥアレグ人勢力は同国北部で勢力を急速に拡大し、すでにキダル(Kidal)や北部の軍司令部が置かれていたガオ(Gao)などいくつかの街を支配下に収めた。トンブクトゥはトゥアレグ人の支配下に置かれていなかった北部最後の主要都市だった。

 通称「砂漠の真珠」として知られるトンブクトゥは、異国情緒あふれる遠隔地の代名詞ともなっている伝説的貿易都市で、人口は約5万人。国連教育科学文化機関(ユネスコ、UNESCO)の世界遺産(World Heritage)にも指定されている。

 アザワド解放民族運動は「マリによる支配の終わり」であり、「秩序と統治」を維持していくなどとする声明を出した。

■トンブクトゥで略奪 

 現地の人たちは1日、トンブクトゥの軍の基地で重火器の音が聞こえるとAFPに証言した。電話でAFPの取材に応じたある住民は、「武装勢力がすでにトンブクトゥに入っている。こうして話している間にも武装勢力が市内の銀行に向かっているのが見える」と語った。AFPの取材に応じたある銀行の支店長は、宝物庫や銀行、警察署、役所、そして病院まで略奪の被害にあっていると述べた。

 クーデターは国際的な非難を浴び、マリの政治情勢は混迷の度を深めている。クーデターから逃れた同国のアマドゥ・トゥマニ・トゥーレ(Amadou Toumani Toure)大統領は、首都バマコ(Bamako)の安全な場所に隠れていることが分かっている。

■反乱軍は憲法を回復

 反乱軍のリーダー、アマドゥ・サノゴ(Amadou Sanogo)大尉は1日、クーデター後に停止した憲法の回復と政府機関の機能回復を宣言し、次期選挙に反乱軍メンバーが立候補することはないと明言した。

 しかし、バマコ郊外カチ(Kati)の軍事キャンプでAFPと米ナショナル・パブリック・ラジオ(National Public RadioNPR)の取材に応じたサノゴ大尉は、「反乱軍は(政権内から)退くつもりはない」と英語で述べた(マリの公用語はフランス語)。サノゴ大尉によれば、新政権の首相は文民が務めるが、国防相あるいは内相は反乱軍が指名した人物になる可能性があるという。

 西アフリカ諸国経済共同体(Economic Community of West African StatesECOWAS)はこのクーデターを強く非難しており、2日までに憲法秩序が回復されなければ厳しい制裁も辞さないと警告していた。(c)AFP

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