【3月29日 AFP】気候変動によって干ばつや洪水、嵐や海面の上昇といった異常気象のリスクが拡大し、全ての国にとって脅威となっているが、特に小さな島国や貧困国、乾燥地帯での脅威は深刻だ――。国連(UN)の「気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate ChangeIPCC)」は27日、気候変動と異常気象に関する初の報告書の完全版(592ページ)を発表し、このような警告を発した。

 IPCCは報告書の中で、人類が排出した地球温暖化ガスが、すでに何種類かの異常気象に関係していると指摘している。また、いまだ十分に認識されていないが、異常気象の発生頻度が増えるとともに規模も大きくなり、多数の死者や経済的損失などを引き起こす恐れが高まっているとしている。

 報告書の著者の1人、米科学者のクリス・フィールド(Chris Field)氏は「どの国も、災害リスクの削減を優先課題とすべきだ」と忠告している。

 今回の報告書の要点は以下の通り。

・1950年代以降、日平均気温や熱波が観測記録を更新することが増え、また継続日数も伸びていることがはっきりとデータで示されている。21世紀も90~100%の確率でこの傾向は続くとみられる。気候物理学者のトーマス・ストッカー(Thomas Stocker)氏は、温室効果ガスの排出レベルが現在のままだった場合、「『20年に1度の猛暑日』が、21世紀末までには2年に1度の割合で起こるようになるだろう」と予測している。

・暴風雨は過去数十年間で極端に激しさを増しており、地域差は大きいかもしれないが、21世紀にはもっと頻繁に起きるようになるだろう。

・南欧~アフリカ西部は既に干ばつの拡大と長期化を経験している。21世紀には中欧、北米中部、中米、メキシコ、ブラジル北東部、アフリカ南部も同様の道をたどるだろう。

・ハリケーンと台風の強度、発生頻度、寿命が過去40年間に変化したかどうかを評価することは困難だが、その間に海水温が上昇している点から、発生頻度が減っていたとしても風速が強まっていることが予測される。

・沿岸部の巨大都市は特に災害リスクが高い。たとえば、インドのムンバイ(Mumbai)では海面が50センチ上昇し、貧民層が集中する低海抜地域の大半が居住不可能となる恐れがある。

 フィールド氏は、「先進地域か発展途上地域か、水が大量にあふれている地域か水不足の地域か、また海面上昇が問題の地域かにかかわらず、災害リスクはどこにでもある。ただし今回の報告書では特にぜい弱な地域を挙げており、それには発展途上国の沿岸部や小さな島国、慢性的に水資源が不足している地域が含まれている」と説明した。

 IPCCは2007年に発表した第4次評価報告書(Fourth Assessment Report)で複数の誤りが指摘され、閉鎖性と透明性の欠如が批判されたことがある。今回の報告書作成には62か国、220人の科学者や経済学者が参加し、公表済みの何千件もの研究を精査した。その上で作成された原案を、専門家や政府関係者による外部の審査にかけ、3回の審議で約1万9000件の論評を集めた。(c)AFP/Richard Ingham