【3月23日 AFP】フランス南西部トゥールーズ(Toulouse)周辺で仏軍兵士やユダヤ人学校の生徒ら7人が殺害された連続銃撃事件のモハメド・メラ(Mohamed Merah)容疑者(23)が、32時間も自宅に立てこもった末に突入した警察の特殊部隊に殺害されたことは、西ヨーロッパで最もユダヤ人とイスラム教徒が多いフランスに大きな衝撃を与えた。

 4~5月に投票が行われる仏大統領選に向けた選挙戦の中で、社会の不寛容さと治安の悪化への疑問が持ち上がっている。事件を受けて一時止まっていた選挙運動を再開したニコラ・サルコジ(Nicolas Sarkozy)大統領はストラスブール(Strasbourg)で、「このような犯罪は狂信的なモンスターの仕業だ」と述べた。

 これに先立ち同大統領はテレビ演説で、ジハード(イスラム聖戦)関連のウェブサイトを頻繁に閲覧する人に対して法的措置をとることを含め、過激派の取り締まりを強化する方針を示していた。

■「復讐と抗議」の犯行

 パリ検察で対テロ捜査を指揮するフランソワ・モラン(Francois Molins)主任検察官は、メラ容疑者が、殺されたパレスチナ人のために復讐するとともに、フランスがアフガニスタンに軍を派遣し、イスラム教徒の女性に顔を隠すベールの着用を禁止したことに抗議するために7人を殺害したと認めたことを明らかにした。

 さらにモラン主任検察官は、メラ容疑者が、アフガニスタンの旧支配勢力タリバン(Taliban)と関係があるイスラム武装勢力の潜伏地として知られるパキスタンのワジリスタン(Waziristan)地域で、国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)から訓練を受けたとも話していたという。

 アルカイダ系のJund al-Khilafahというグループはウェブサイトで、「このフランス人はシオニストの十字軍の基礎を揺るがす作戦を実行した。われわれがこれらの作戦を実行した」「(イスラエルの)罪が、罰を免れることはない」などとする声明を発表し、メラ容疑者が起こした一連の事件への関与を認めた。

 米民間情報機関SITEインテリジェンス・グループ(SITE Intelligence Group)によると、Jund al-Khilafahはアフガニスタンやカザフスタンでの攻撃で犯行声明を出したことがある。

■犯行時の動画が存在

 モラン主任検察官は22日、メラ容疑者が7人を殺害したとき、胸にくくりつけたビデオカメラで動画を撮影しており、この動画を見たことも明らかにした。11日の最初の事件では、殺害された空挺部隊員に「おまえは俺の兄弟たちを殺した。今度は俺がお前を殺してやる」と言って2発の銃弾を放ったという。

 トゥールーズ近郊のモントバン(Montauban)で起きた15日の事件では、兵士2人を撃った後、「アッラーフ・アクバル(神は偉大なり)!」と叫びながらスクーターでその場を離れたという。19日はヘルメットをかぶり、スクーターでトゥールーズのユダヤ人学校に乗りつけて、教師1人と子供3人を殺害した。(c)AFP/Remy Bellon and Laurent Lozano