【3月15日 AFP】米金融大手ゴールドマン・サックス(Goldman Sachs)は、手段を選ばず顧客から利益を搾り取ることだけに専念する「有害で破壊的な」企業に成り果てた――。同社を退職する幹部が、14日の米紙ニューヨーク・タイムズ(New York Times)への寄稿で経営陣を批判した。

 寄稿したのは同社に12年間勤務し、14日に退職したグレッグ・スミス(Greg Smith)氏。最後の肩書きは、ロンドン支社エグゼクティブ・ディレクター兼株式デリバティブ部門欧州・中東・アフリカ地域責任者だった。

 スミス氏はゴールドマンについて、資産を増やしたい顧客を誠実に手助けするとという伝統的企業文化を捨て去ったと痛烈に批判。経営陣が顧客を「操り人形」呼ばわりし、社員たちは顧客から資金を「剥ぎ取る」ことばかり話していると書いている。

「問題を端的に言えば、顧客の利益は二の次にされ、経営計画や金儲けばかりだった」

 スミス氏は特に、ロイド・ブランクファイン( Lloyd Blankfein)最高経営責任者(CEO)とゲーリー・コーン(Gary Cohn)社長を名指しし、「彼らの下で、ゴールドマンは(顧客を重んじる)企業文化を失った」と批判した。

「社員たちが顧客を食い物にすることについて無神経に話しているのを聞くたび、気分が悪くなった。この1年間に5人の幹部が顧客を『操り人形』と呼ぶのを聞いた。電子メールでもそのように呼んでいた」

 この寄稿について、ゴールドマン側は「同意できない」と反論。スミス氏の見解は「わが社の経営の在り方を反映していない。顧客の成功なしに、わが社の成功はありえないというのがわが社の考えだ」などと主張している。

 また、名指しで批判されたブランクファイン最高経営責任者とコーン社長は、報道陣に公開された同社社員宛て内部文書の中でスミス氏について、同社で「副社長」の肩書きを持った1万2000人の中の1人にすぎず、「3万人も社員がいれば、不満を持つ者も出てくる」と釈明している。

 ゴールドマンは2008年の金融危機の際にサブプライムローン関連業務で不正があったとして、2010年に米証券取引委員会(Securities and Exchange CommissionSEC)から当時としては史上最高額となる5億5000万ドルの罰金支払いを命じられた。(c)AFP/Paul Handley