【3月1日 AFP】アルプス(Alps)山脈の氷河で発見された5000年前の男性のミイラ「エッツィー(Oetzi)」(通称アイスマン、Iceman)のDNA配列データの解析で、遺伝的に心疾患の素因があったことや牛乳アレルギーだったこと、現在の地中海の島の人びとと同じく中東にルーツがあることなど、新たな「プロフィール」が明らかになった。

 このミイラは、1991年にイタリア北部・南チロル地方のエッツタール・アルプス(Oetztal Alps)でドイツ人ハイカー2人に発見され、地名にちなんで「エッツィー」と名づけられた。死亡時の推定年齢は45歳、身長160センチ、体重50キロ程度で、主要な動脈を矢で射抜かれて死んだとみられている。

 今回、ボルツァーノ欧州アカデミー(European Academy of BolzanoEURAC)内の「ミイラとアイスマン研究所」と、独テュービンゲン大学(University of Tuebingen)、同ザールラント(Saarland University)大学の共同研究が行った分析で、アイスマンには循環器系に遺伝性の問題があり、死亡時に既に動脈硬化が起きていたことが分かった。研究に参加した人類学者やバイオインフォマティクス(生命情報科学)研究者は、「アイスマンの時代にそうした遺伝的素因が既存していた事実は、循環器系疾患の主たる要因が決して現代のライフスタイルにあるとは限らないということを示しており、非常に興味深い」と話している。

 研究では、アイスマンの祖先のルーツが現在の中東にあることも明らかになった。これは現在、地理的に大陸から離れ隔離されている地中海のサルデーニャ(Sardinia)島やコルシカ(Corsica)島の人びとによく見られる遺伝子ルーツだという。

 また、アイスマンの目と髪の色は茶色で、牛乳アレルギーを持っていたことなども確認された。乳製品へのアレルギーは当時、農耕や酪農が広まっていたにもかかわらず依然として乳糖不耐症が一般的だったという学説を裏付ける。研究チームの説明によると、牛乳を消化する能力は、アイスマンが生きた時代よりも後の1000年くらいの間に、動物の家畜化とともに成人の間で徐々に備わっていったものだという。

 アイスマンのミイラは現在、伊ボルツァーノ(Bolzano)の南チロル考古学博物館(South Tyrol Museum of Archaeology)で保管されている。今回の研究結果は、英オンライン科学誌ネイチャーコミュニケーションズ(Nature Communications)最新号に掲載されている。(c)AFP

【関連記事】
アルプスで発見のミイラ、「アイスマン」は欧州人ではなかった 伊英研究
アルプスで発見のミイラ、「アイスマン」は2度襲撃されていた ドイツ研究
5300年前のミイラ「アイスマン」の復元模型の展示始まる、イタリア