【2月23日 AFP】男性という性を決定づけるY染色体が小さくなり続けているため、やがて男性は絶滅するという説があるが、この説は誤っていると結論付けた遺伝子研究が、22日の英科学誌ネイチャー(Nature)に発表された。

「男性絶滅説」は、男性染色体(Y染色体)が劇的に縮小したという事実を科学者らが発見した約10年前に注目を集めるようになった。数億年前のY染色体は1400個以上の遺伝子が乗る巨大サイズだったが、今や遺伝子が数十個程度しか乗らない極小サイズになってしまったという。そのため、Y染色体はいずれ消滅すると一部で叫ばれるようになった。

 男性絶滅説を唱える学者は、Y染色体を失った人類は、げっ歯類のキイロモグラレミングのような末路をたどると考えている。このほ乳類は、Y染色体が進化的圧力を受けると2つの種に分化したが、このうちの1種はY染色体を持っていない。その子孫の性別がどのように決定されているのかは謎だ。

 最悪のシナリオに沿えば、人工的な方法で男性という性の窮地を救わないと、男性は絶滅してしまう。絶滅は500万年後だと言う学者もいれば、わずか12万5000年先だと言う学者もいる。

■Y染色体は安定している

 しかし、米マサチューセッツ工科大(Massachusetts Institute of TechnologyMIT)ホワイトヘッド生物医学研究所(Whitehead Institute for Biomedical Research)などの研究チームは今回、Y染色体の縮小は太古に起こったことであり、以来Y染色体は驚くほど安定しているとする論文を発表した。

 人類とチンパンジーから約2500万年前に枝分かれしたアカゲザルと人間のY染色体を比較したところ、枝分かれ後に失った祖先遺伝子の数はアカゲザルが0個、人間が1個だった。なお、1個は全染色体のわずか3%にしか相当しない。これは「Y染色体は消滅しない」ことを明確に示しているという。

 10年前から「衰えつつあるY染色体」説と戦ってきたという同研究所のデビッド・ページ(David Page)氏は次のように説明する。X染色体とY染色体は、性染色体に特化する前は基本的に普通の染色体であり、互いに遺伝子情報を交換(クロスオーバー)して有害な変異を取り除き、遺伝子プールを広く保っていた。だがこのXY間でのクロスオーバーが行われなくなると、Y染色体は直ちに不要な遺伝子をそぎ落としていき、今のような安定した状態になったという。(c)AFP